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現場知らぬ社員が管理職になる時代 人を育てない「フリーランス化社会」の行きつく果て:労働政策研究・研修機構 主任調査員に聞く(後編)(3/3 ページ)
フリーランスという働き方に未来はあるのだろうか。労働政策研究・研修機構 主任調査員の山崎憲さんに米国での事例を聞き、解決策を探った。
現場を知らない人に監督が務まるのか
以上が山崎さんへのインタビュー内容だ。
絞り込まれる大企業社員とアウトソース先との断絶が、問題点として指摘されていた。何としても大企業の「中の人」にならねば、という受け止めもありだろう。だが、その数は限られ、多くは「外の人」になるのだ。どこか身分にも似た「格差」を生み出す点と併せ、このモデルにはもう一つ問題があることを指摘したい。
それは「現場叩き上げ」と違って「最初から監督」の場合、現場を知らずに監督が務まるのか、という点だ。日本的ものづくりの強みは、自社内に現場を抱えることで、OJTを通じて人を育て、現場の情報を研究開発につなげてきた点にもある。怒涛(どとう)のようなアウトソースに死角はないのか。熱い語りを聞きながら、そんなことも考えさせられた。
著者プロフィール
北健一(きた けんいち)
ジャーナリスト。1965年広島県生まれ。経済、労働、社会問題などを取材し、JAL「骨折フライト」、郵便局の「お立ち台」など、企業と働き手との接点で起きる事件を週刊誌、専門紙などでレポート。著書に『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないか』(旬報社)、『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社)、共著に『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』(旬報社)、『委託・請負で働く人のトラブル対処法』(東洋経済新報社)ほか。ルポ「海の学校」で第13回週刊金曜日ルポ大賞優秀賞を受賞。
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