東京オートサロンで友山副社長が語ったエモーション:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)
先週開催された「東京オートサロン2019」。初日の朝一番に行われたプレスカンファレンスでマイクを握ったのは、トヨタ自動車の友山茂樹副社長だ。GRカンパニー率いる友山氏が語ったこととは……?
スポーツカーとしてのコペンの素養
今回は極めて限られた時間のインタビューだったので、ここで時間切れとなった。しかしいくつかハッキリしたことがある。クルマのコモディティ化を止めるというトヨタの明確な方針の具体例として、トヨタはクルマ好きのコミュニティーに対してできることをやろうとしている。それはオートサロンのようなお祭りを盛り上げることや、エモーションの象徴としてのスポーツカーを継続生産していくことにつながっている。
そのための86であり、スープラであり、コペンGRである。特にコペンGRは非常に興味深い題材だと思う。
運転したことのある人は少ないかもしれないが、現行コペンはそもそもなかなかのハンドリングカーであり、スポーツカーとしての素養は高い。筆者の個人的見解で言えば、86よりずっとスポーツであると思う。さらにGRカンパニーの積み上げて来た実績によって、その手腕に対する信頼もある。本来素材として厳しいクルマをちゃんとスポーツと呼べる状態に仕立てたケースをたくさん見てきた。
だから、そのコラボには大きな期待が掛かる。コペンGRはダイハツ側で開発し、その監修をGRが行うという手順で作られたようだが、現行コペンの仕上がりからしてダイハツ側の開発能力に不足はないだろう。加えてファクトリーチューンのノウハウを膨大に持つGRがそこに協力する。スポットの増設の仕方のノウハウに関して、恐らく世界中のメーカーの中でもトップクラスだと思われるGRが監修したコペンに、筆者は今から乗りたくて仕方がない。
ビジネス面でも面白い。もしこれが製品化されたとしたら、それを販売するのは果たしてダイハツだけだろうか? 筆者は恐らくトヨタでも扱うことになるだろうと考える。そうなれば販売台数は大幅に増えるだろう。ダイハツ車をトヨタが売る。それは当然アライアンス5社の部分的相互乗り入れに発展する可能性を秘めている。
GRカンパニーは今、トヨタの行く末に極めて重大な役割を果たそうとしているのだ。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
関連記事
- 2018年に乗ったクルマ トヨタの「責任」とスズキの「義務」
この1年間に試乗したクルマで、特筆すべきクルマが6台ある。今回はトヨタのクラウン、カローラ・スポーツと、スズキのジムニーについて言及する。 - トヨタがスープラを「スポーツカー」と呼ぶ理由
長らくうわさのあったトヨタの新型スープラが、年明けの米デトロイトモーターショーで発表されることになった。今回はそれに先駆けて、プロトタイプモデルのサーキット試乗会が開催された。乗ってみてどうだったか? - トヨタがレースカーにナンバーを付けて売る理由
東京オートサロンのプレスカンファレンスで、トヨタはとんでもないクルマを披露した。「GRスーパースポーツコンセプト」。FIA世界耐久選手権(WEC)に出場したTS050 HYBRIDをわずかにアレンジしたもので、お金さえ払えばほぼ同じものが買えるというのだ。 - え!? これクラウンだよな?
トヨタのクラウンが劇的な進化を遂げた。今まで「国産車は走りの面でレベルが低い」とBMWを買っていた人にとっては、コストパフォーマンスがはるかに高いスポーツセダンの選択肢になる可能性が十分にあるのだ。 - 上からも下からも攻めるトヨタ
トヨタは2つの発表をした。1つは「KINTO」と呼ばれる「愛車サブスクリプションサービス」。もう1つは販売チャネルの組織改革だ。ここから一体トヨタのどんな戦略が見えてくるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.