カルロス・ゴーンは現代の立花萬平か 日本が「人質司法」を止められない事情:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
日産自動車前会長、カルロス・ゴーン容疑者が意見陳述で容疑を否認した。一連の騒動についてさまざまな人がいろいろなことを述べているが、筆者の窪田順生氏はちょっと違う見方をしている。NHKの朝ドラ『まんぷく』とかぶるところがあって……。
事実はドラマよりもエグい
立花萬平のモデルは、日清食品創業者で「チキンラーメン」の生みの親である安藤百福氏。ご存じの方も多いと思うが、安藤氏は台湾人で、福子のモデルである妻・仁子さん以外に台湾にも妻がいた。こういう事実はどういうわけか朝ドラでは見事にスルーされているのだが、萬平・福子夫妻に起きるエピソードは基本的に「史実」をベースとしている。もちろん、先の「国策捜査」も然りである。
ただ、事実は小説より奇なりではないが、事実はドラマよりもかなりエグい。
『戦後、台湾出身者は日本は中華民国か、どちらかの国籍を選択しなければならなかった。後に日本国籍を取得するものの、その時の安藤氏は中華民国を選んだ。この選択によって、当時の日本人が持っていた戦時所得を再分配するための「財産税」の対象からはずれ、新たな事業への足がかりを手にした。しかし、豊かな資産を使った氏の事業は発足したばかりの国税庁の目にとまり、脱税容疑で収監されてしまう。氏は「いけにえにされた」と怒りを隠さなかった』(日本経済新聞 2007年1月6日)
安藤氏はあくまで合法的に事業を展開していただけなのに、他の外国籍経営者たちに対する「見せしめ」として、私腹を肥やしているという疑いをかけられたのだ。
そう聞けば、誰かの姿と重なって見えないか。そう、不正と欲にマミられた外国人経営者のそしりを受けているゴーン氏だ。
勾留理由の開示を東京地裁に請求して法廷にあらわれたゴーン氏も「合法」を強調し、「根拠のない告発によって不当に非難され、不当に拘束された」と強く主張している。
経済ジャーナリストの伊藤博敏氏が『現代ビジネス』で書いているように、ゴーン氏によるルノー・日産統合を阻止するための「国策捜査の生贄」(2018年11月22日)となったという見方があることは今さら説明の必要がないが、安藤氏もそれと非常によく似たパターンで逮捕されているのだ。
関連記事
- 「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由
ドラマ「下町ロケット」の特別編が放映され、14.0%という高視聴率を叩き出した。多くの人がこのドラマを見て胸が熱くなったかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。ドラマの内容を考えると、「日本の未来に不安を感じる」という。どういう意味かというと……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - 「外国人は来るな!」と叫ぶ人たちが、移民政策に沈黙しているワケ
いよいよ日本が、世界有数の「移民大国」へと生まれ変わる。普段、「外国人は来るな」と叫ぶ人たちは、なぜこの法案に沈黙しているのか。その背景には、「恐怖」が関係していて……。 - 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.