ZOZOざんまいは採算とれたのか:「広告費換算」は曲者(2/3 ページ)
普通なら忌避する炎上行為を自ら起こす人たちがいます。ZOZOタウン・前澤社長の「100万円あげますキャンペーン」や、毎年恒例でマグロ初競り最高値更新をした「すしざんまい」など、その採算を考えましょう。
ネットに無知な経営者の存在
この「広告費換算」というやつが曲者(くせもの)です。本当なんでしょうか?
プロスポーツやイベントが成功すると、「何億円の経済効果がある」という試算も発表されたりします。実際にお客が集まったり、人が移動するような実消費換算は、理論上とはいえある程度意味があるかもしれません。観光客が集まれば消費が起こり、人件費や建築費などさまざまな経済活動につながるのと同じ理屈です。
一方広告費換算というものについて、同様に「ただ目立てばよい」といえるのでしょうか?
極端な例では注目を集める事件を起こした場合でも「目立つ」という点では同じです。大事件はビッグニュースとして次々拡散されて広まります。NHKから民放までが生中継し続けた、昭和の「あさま山荘事件」の90%という視聴率のように、ショッキングであればあるほど注目も集まります。
ZOZO前澤社長の場合、自身のTwitterフォロアー50万人を、500万人を超えるまでに増加させることに成功したという点で、単なる注目以上の成果を上げたとはいえるでしょう。1人100万円という金で釣ってフォロアー増を狙う手法は反発を呼び、キャンペーン終了と同時に数十万単位でのフォロー解除も発生しています。ただこれは当初から当然予見されており、また解除者をはるかに上回る新フォロアーが得られたという点は間違いありません。
経営的に、マーケティング的に重要なことは、こうして目論見通り増えたフォロアー数の価値をどう評価すべきかにあります。つまり結果として話題になった今回の件は、計画段階でその成否は決まっていたのです。この手法に価値がないというのは、前澤氏がプランを表明した段階で判断されるのべきなのです。そこまでの理解を持たない経営者は価値判断する資格がありません。
私は2つの目的があったと感じています。1つはZOZOの顧客となり得る、こうした話題に飛びつく層の獲得です。批判を含めてネットニュースでは話題性こそもっとも価値を持っています。大仰で意味深なタイトルをつけることは、ネットニュースや記事では何より重要とされます。「中身が良い」かどうかの判断は簡単ではありませんが、タイトルとしてクリックを稼げるかどうかはただちに判別可能です。
つまり前澤氏のような経営観をもって、話題作り含めた広い意味での広報活動という戦略的な目的があるのかどうかこそ、評価の本質なのだといえます。単に「ZOZOが成功したからウチも」というような定見のない姿勢が論外なのはいう間でもありません。それはマーケティングの成否ではなく、経営者の判断がズレているのです。
同じく加入者拡大キャンペーンを行ったPayPayも、一番リーチしたかったノンアクティブな、未利用ユーザーを開拓できたのかどうか、単にニュースで話題となった以上の成果こそが評価の分かれ目です。予定を大幅に上回る早期キャンペーン終了は、単なるチェリーピッカー(特売あらし)への便益供与だけで終わってしまったのではという疑念が残ります。
関連記事
- 「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由
ドラマ「下町ロケット」の特別編が放映され、14.0%という高視聴率を叩き出した。多くの人がこのドラマを見て胸が熱くなったかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。ドラマの内容を考えると、「日本の未来に不安を感じる」という。どういう意味かというと……。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - えっ、盗まれないの? 無人の古本屋は、なぜ営業を続けられるのか
東京の三鷹駅から徒歩15分ほどのところに、無人の古本屋がある。広さ2坪のところに、500冊ほどの本が並んでいるだけ。「誰もいなかったら、本が盗まれるのでは?」と思われたかもしれないが、実際はどうなのか。オーナーに話を聞いたところ……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.