ZOZOざんまいは採算とれたのか:「広告費換算」は曲者(3/3 ページ)
普通なら忌避する炎上行為を自ら起こす人たちがいます。ZOZOタウン・前澤社長の「100万円あげますキャンペーン」や、毎年恒例でマグロ初競り最高値更新をした「すしざんまい」など、その採算を考えましょう。
炎上マーケティングの致命的欠陥
話題を集めることには間違いなく成功したZOZOタウンやすしざんまいですが、見落とされている欠陥があります。それは「社員の」モチベーションです。億万長者の社長が身銭を切って会社への貢献をして何が悪いのかということですが、それを見ているのは消費者だけではありません。従業員も黙って見ています。いや、世間の一般人以上に自社の活動や広告についての内部者被見率は高いのです。
つまり私財1億円で500万の新フォロアーを獲得できた一方、自社社員のモチベーションへ与えた悪影響は大きな損失と言えます。時給1000円の非正規雇用のスタッフは、自家用ジェットで女優をはべらしてワールドカップ決勝戦をVIPルームで観戦する社長をどう見るでしょうか。たかだかマグロに、自分の生涯年収を超える3億をはるかに超える値を払う社長に、どんな感情を持つでしょう。
ゴーン氏の日産追放騒動では、その不適切支出と背任こそが問題なはずですが、同時に自分が何十億円ものばく大な年収を得ていながら、一方で工場労働者を大量リストラしたことへの呪詛感情も後押しして批判につながっています。経営上必要な投資であったとしても、それを見る社員がどう感じるか、結果としてその事業を推進するのは現場スタッフです。非正規雇用スタッフなどいくらでも切り替えが利くという判断は経営数値的に間違いではないかもしれません。しかし人間の感情を踏みにじる行為は、カリスマ経営者すら足をすくわれることになったゴーン事件を教訓とすべきだと思います。(増沢隆太)
著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役。キャリアとコミュニケーションの専門家として、芸能人や政治家の謝罪会見などをコミュニケーションや危機管理の視点で、テレビ、ラジオ、新聞等において解説している。大学や企業でのキャリア開発やコミュニケーション講座を全国で展開中。著書「謝罪の作法」他多数。
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