見かけなくなった「いちごスプーン」 メーカーが明かす現在の“意外な用途”:食べ方が変わった(2/2 ページ)
いちごスプーンを見かける機会が減った。かつては新潟県燕市で年間数十万本以上生産されていた。現在は、いちごをつぶす以外の用途でも使われているという。
いちごスプーンを発明した製造メーカーの見解は?
金属洋食器などの製造を手掛ける小林工業(新潟県燕市)は、現在でもいちごスプーンを製造している。同社の小林貞夫社長は「1960年に当社が日本で初めていちごスプーンを開発したと聞いています」と語る。当時、日本産のいちごが流通し始めていたが、酸味の強いものが多かったため、砂糖や牛乳をかけて食べるのが一般的だった。しかし、皿の部分が丸い通常のスプーンでいちごをつぶそうとすると、つるんと逃げてしまう。そこで、同社が協力工場と専用スプーンの開発に着手することになったという。
小林社長が開発に携わった職人に聞いた話によると、最初の試作品はスプーンの皿の部分が平らなものだった。しかし、まだまだ改良の余地があると判断した職人は、いちごの種をヒントに突起をつけることを思いついた。試行錯誤を繰り返した結果、直線状に突起を並べるのではなく、微妙に突起の位置をずらして並べたものを考案した。当時としては画期的なアイデアだった。
いちごスプーンは大ヒットし、最盛期には燕市全体で年間15〜30万本生産されていたのではないかと小林社長は振り返る。小林工業でもかつては年間5〜6万本生産していた。
現在、同社が生産するいちごスプーンは年間300〜600本にとどまる。小林社長は「いちごの食べ方が変わったので、いちごスプーンの役割は終わろうとしています。しかし、現在も当社の製品がほしいというファンの方がいらっしゃるので、生産を続けています」と語った。もちろん、同社以外にもいちごスプーンの製造を続けるメーカーはあるが、生産量は最盛期に及ばないとみられる。
なお、小林社長によると、いちごスプーンは介護食や離乳食を食べるシーンで利用されるようになっているという。食品をしっかり固定し、つぶしやすい形状が支持されているのだとか。
すっかり姿を見なくなったいちごスプーンだが、意外な形で生き残りそうである。
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