独立・起業したい理由は「定年後の不安」 資金をためている人の平均額は……:7割が「個人で会社を買う」に興味
経営承継支援が実施した「独立・起業に関する意識調査」によると、独立・起業したい理由は「定年退職後の収入に不安がある」が多かった。一方で、半数以上がまだ資金をためていない。ためている人の平均額は1259万円だった。
独立・起業したい理由は「定年退職後の不安」を感じているから。だが、半数以上は資金をためていない――。事業承継を目的としたM&A(合併・買収)支援事業を手掛ける、株式会社経営承継支援の調査で分かった。
独立・起業に関心があるビジネスパーソンを対象にした意識調査によると、関心を持っている理由(複数回答)で最も多かったのは「定年退職後の収入に不安がある」(39.0%)。次いで「副業やパラレルワークに興味がある」(35.0%)、「自分の裁量で仕事がしたい」(31.8%)だった。収入を得ることに加えて、多様な働き方を模索する傾向がうかがえた。
世代別に見ると、20〜30代は「副業やパラレルワークに興味がある」「自己実現したい」という回答が目立ったが、40〜50代になると「定年退職後の収入に不安がある」という回答が最も多かった。
また、独立・起業に関心を持つ理由は「現在の仕事への満足度」によって大きく変わるという結果も出た。「経営者として事業に参画したい」と回答した人は、現在の仕事に「非常に満足している」層では35.3%を占めたが、「全く満足していない」層は12.5%にとどまった。一方、仕事に全く満足していない層は「自分の裁量で仕事がしたい」「会社員での収入よりも多く稼ぎたい」「雇用にとらわれたくない」と回答するケースが目立った。
後継者不足の社会問題化を背景に、個人が会社を買って経営者になる事例が注目されている。個人によるM&Aに対しては、21.3%が「非常に興味がある」と回答。「やや興味がある」も50.3%に上った。しかし、M&Aの際に必要なプロセスを知っている人は約2割にとどまった。
一方、独立・起業に関心があるにもかかわらず、将来的に独立・起業するための資金をためている人は44.8%にとどまり、ためていない人が55.2%と半数以上だった。
資金をためている人の平均額は1259万円、中央値は600万円だった。今後独立・起業する場合の資金調達方法については、80.8%が「自己資金で調達したい」と回答した。
同社の笹川敏幸社長は調査結果について「働き方の多様化という点では、副業、パラレルワーク、フリーランスなど、独立志向が強まっていることもあり、個人が中小零細企業をM&Aするケースが飛躍的に増えていくだろう」とコメント。一方、「検討が甘く失敗する例も出てくるのではないか。買い手となる人はM&A前の事業リスクの検証からM&A後の経営までをしっかりと検討する必要がある」と指摘している。
調査は2018年12月、独立・起業に関心のある20〜59歳の男女400人(20〜50代の各世代100人ずつ)を対象に、Webアンケート方式で実施した。
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