「アルコール離れ」は悪いことばかりなのか 関係者の“不都合な真実”:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「ビール離れ」に歯止めがかからない。大手メディアは「消費者の節約志向」「豪雨や地震の影響」などと報じているが、ビールの消費量は14年連続で減少している。「減少が続いている」と聞くと、あまりいいイメージを抱かないかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
「時代の流れ」を真摯に受け止めるべき
『新・観光立国論』などの著者であるデービッド・アトキンソン氏が、幾度となく指摘しているように、「人手不足」が進行すれば、賃金を上げられない業界や企業の「整理・統合」を自然と促すことができるのだ。
こうなると市場原理で賃金アップが達成されるので、低賃金と低待遇で長年苦しんできた日本の労働者たちにとってちっとも悪い話ではない。
人手不足倒産が溢れ返るぞと脅す人も多いが、そもそも日本はさまざまな業界で小規模事業者が乱立して“共食い状態”にある。これからの人口減少社会を踏まえれば、「賃金アップ」でふるいにかけて、適正数に整理統合されるのは必然なのだ。
ただ、「減る」ことを極度に恐れる日本人は、低賃金で外国人をコキ使わなければ回らないような企業でさえも、どうにかして守ろうとする。政治家もそういう企業が「票田」なので何も考えない。
昔の日本人は、これが減る、あれが離れる、なんて感じでパニックになっているうちに、冷静に物事が考えられなくなったんだな――。
そんな風に、我々の子どもや孫の世代からあきれられないよう、「時代の流れ」というものを真摯(しんし)に受け止めるべきなのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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