「アルコール離れ」は悪いことばかりなのか 関係者の“不都合な真実”:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
「ビール離れ」に歯止めがかからない。大手メディアは「消費者の節約志向」「豪雨や地震の影響」などと報じているが、ビールの消費量は14年連続で減少している。「減少が続いている」と聞くと、あまりいいイメージを抱かないかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
「減る」ことに恐怖を感じる日本社会
だが、現状では「アルコール離れ」をポジティブに捉える声はほとんどない。
むしろ、「自動車離れ」「雑誌離れ」などと同様に、モノの価値が分からぬ若い世代によって引き起こされている危機的状況であり、社会が知恵を出し合って食い止めなくてはいけないもののように語られている。
「時代の変化」から頑なに目を背け続けているのだ。
なぜこうなってしまうのか。個人的には、日本人の“右肩上がり信仰”が影響しているからだと思っている。
戦後の復興で、GDPも右肩上がりとなってたことで「世界一の経済大国」にまで成長を果たしたと考える人の多いこの国では、「とにかく右肩上がりはいいことだ」という固定概念がビタッと社会に染み付いている。
こういう旧ソ連の計画経済みたいな思想に取りつかれた人たちは、「減少」とか「マイナス」という言葉を聞くだけで拒否反応を起こす。そして、症状のひどい人になると、どんな手を使っても回避しなくていけないという強迫観念にとらわれてしまう。
日本を代表する名門企業が現場に利益のかさ上げを命じたり、「世界一優秀」と自画自賛するエリート公務員たちが次々と改ざんに手を染めたりするのは、これが理由だ。
そんなバカなと思うかもしれないが、「減る」という恐怖にとらわれた日本社会が、冷静さを欠いて暴走するケースは山ほど起きている。
最近で言えば、「人手不足」だとパニックになって、外国人を小間使いや奴隷のように働かせようなんて法律を後先考えずにサクッと賛成したのが分かりやすい。
実はこの「人手不足」も「アルコール離れ」と同じで悪いことばかりではない。
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