「アルコール離れ」は悪いことばかりなのか 関係者の“不都合な真実”:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
「ビール離れ」に歯止めがかからない。大手メディアは「消費者の節約志向」「豪雨や地震の影響」などと報じているが、ビールの消費量は14年連続で減少している。「減少が続いている」と聞くと、あまりいいイメージを抱かないかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
「アルコール離れ」の恩恵を受ける産業
自殺が減っても、アルコール離れで景気が悪くなったら人生に悲観する人も増える、とか言う人もいるが、アルコール消費量が減っているからといって、日本人が「消費活動」自体をしなくなったわけではない。酒を飲まない代わりに何かを飲み、何かに金を使う。そちらの産業が活性化するので、そんなに落ち込むような話でもないのだ。
分かりやすいのが、「炭酸水」である。
炭酸水の生産量は06年には2万9000キロリットルだったが右肩上がりで増え続けて、16年には20万6000キロリットル。なんと10年で7.1倍と、人口減少をものともしない成長を遂げている。
この成長エンジンのひとつに、「ビールの代用品」というニーズがあることは明白だろう。
毎日、晩酌にビールや発泡酒を飲んでいた人が「休肝日」に炭酸水を飲んだところ、思いのほか「のどごし」があってハマってしまった。あるいは、ダイエットや健康のためにビールの代わりに炭酸水を飲んでいる、などユーザーの声がちまたに溢れているのだ。
また、日本人の「アルコール離れ」の副作用でもある「家飲み」も酒類と異なる分野を活性化させている。
冷凍食品などの「つまみ」だ。
総務省の家計調査(総世帯)によると、08年から9年連続で冷凍食品の家計消費支出が伸びている。これを裏付けるように、日本冷凍食品協会によれば、冷凍食品の国内生産量は2年連続で過去最高を記録。比率としては、やはり飲食店などで出す「業務用」が多いが、近年は「家庭用」がじわじわと増えているという。
08年といえば、日本人の1人当たり飲酒量がガクンと減ったタイミングだ。消費者が酒をガバガバ飲む楽しみ方から、「つまみ」とともにチビチビと楽しむ方向へ舵を切ったとも見えるのだ。
「アルコール離れ」が進めば、酒を製造するメーカーや居酒屋などネオン系産業などはもちろん打撃は被るが、日本経済はそこだけで回っているわけではなく、当然「アルコール離れ」の恩恵を受ける産業も出てくるというわけなのだ。
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