「アルコール離れ」は悪いことばかりなのか 関係者の“不都合な真実”:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「ビール離れ」に歯止めがかからない。大手メディアは「消費者の節約志向」「豪雨や地震の影響」などと報じているが、ビールの消費量は14年連続で減少している。「減少が続いている」と聞くと、あまりいいイメージを抱かないかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。どういうことかというと……。
酒に関わる人たちの「不都合な真実」
独立非営利組織「TV-Novosti」が展開するメディア「ロシア・ビヨンド」で、ロシア連邦大統領付属経済・国務アカデミー(RANEPA)のアレクサンドラ・ブルジャク上級研究員は、このようにコメントしている。
「ウォッカの販売は激減している。前年同期比で13.4%減。売上高の減少は2015年に起こっていた。2014年と比べて12.6%減だった」(2017年8月21日)
日本人の「ビール離れ」が「アルコール離れ」によるものと同じように、ロシア人の「ウォッカ離れ」も彼らの「アルコール離れ」が根っこにあることは言うまでもない。
事実、全ロシア世論調査センター(VTsIOM)の17年の調査によれば、普段から酒を一切飲まないと回答したロシア人は39%にのぼっており、07年調査時(25%)と比べて大幅に増えているという。
アルコールの消費量が増えると自殺率も増加し、消費量が減ると自殺率も減っていく――。酒に関わる人たちにとっては、全力で潰しておきたい「不都合な真実」だが、実はこの傾向は日本にもまんま当てはまってしまう。
ご存じのように、日本は先進国の中で際立って自殺率が高い。03年には3万4427人というピークに達してからは徐々に減少傾向となり、09年から8年連続の右肩下がり。17年に2万1321人とピーク時と比べると4割程度になっている。
実は酒量もこの動きとビミョーにリンクしている。
先ほどの「1人当たり酒類消費数量」を見ると、年間100〜90リットル台を推移していた酒量が80リットル台へとガクンと落ちたのは03年。そこからじわじわと減少していたのがまたガクッと落ち込むのが08年となっているのだ。
もちろん、酒を飲むとすべての人が自殺をするとか、酒を取り締まれとか言いたいわけではない。自殺してしまうような心の問題を抱えている人が、酒によってスイッチを押されてしまうケースがあることは、世界中の調査でも明らかになっている事実であって、酒の消費量が減ることで、そのような悲劇も相対的に減っている、ということを申し上げたいだけである。
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