東急がJR北海道に“異例”進出! 全国127の観光列車を「分布図」にすると……:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
JR北海道が東急電鉄の豪華観光列車を運行すると報じられた。“異例”の取り組みがどうなるか注目だ。「観光列車大国」の日本には127もの観光列車があるが、まだ空白地帯もある。そこに商機があるかもしれない。観光列車の「分布図」を作ってみると……
1月24日、NHKが「JR北海道で東京急行電鉄(東急電鉄)の豪華観光列車を運行へ」と報じた。JRの路線を大手私鉄の豪華観光列車が走る“異例”の取り組みだという。細かいことを言えば、東急電鉄が企画営業する豪華観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」は、横浜〜伊豆急下田間のうち、横浜〜熱海〜伊東間はJR東日本の路線を走っている。枠組みとしては日本初ではなく、東急電鉄とJR東日本のような協業がJR北海道で始まる。
続報として、25日に共同通信が「THE ROYAL EXPRESS」の車両を走らせると報じ、一方、北海道新聞は「JR東日本と東急電鉄が首都圏などで展開してきた観光列車のノウハウを生かし、新たに製造する豪華車両の運行を検討」と報じた。非電化区間が多いJR北海道まで電車を搬入して走らせるとは考えにくい。しかし、いきなり新造車両となればコストが大きい。線路の存続も危うい状況で億単位の投資はばくちに近い。
試験的に「THE ROYAL EXPRESS」で運行し、良い見通しが立てば将来は新造、という算段かもしれない。これはJR北海道、または東急電鉄の正式発表を待ちたい。
観光列車の「上下分離」で参入しやすく
注目すべきは、JR北海道が運行管理を担い、東急電鉄が営業を行うという手法だ。いわば観光列車の上下分離で、これも前例がある。道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」だ。
道南いさりび鉄道は北海道新幹線の並行在来線を継承した第三セクターで、人口が少なく赤字は必至。誘客のために観光列車を走らせたいけれども、ノウハウがない。そこで大手旅行代理店の日本旅行が企画から車内サービス、販売までを一貫して担当する。道南いさりび鉄道としては列車をダイヤ通りに運行する部分を担う。日本旅行としては、観光バス貸切ツアーと同様のノウハウで観光列車貸切ツアーを実施する。
関連記事
- 東急・相鉄「新横浜線」 新路線のネーミングが素晴らしい理由
東急電鉄と相模鉄道は、新路線の名称を「東急新横浜線」「相鉄新横浜線」と発表した。JR山手線の新駅名「高輪ゲートウェイ」を巡って議論が白熱する中で、この名称は直球で分かりやすい。駅名や路線名は「便利に使ってもらう」ことが最も大切だ。 - 「瑞風」「四季島」のポジションは? 旅づくりのプロが観光列車を分類
6月17日、JR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」が運行を開始する。JR3社のクルーズトレインが出そろったことで、日本の鉄道旅が新たな高みに到達したといえる。いまや“観光列車”が鉄道業界と旅行業界のキーワードだが、そもそも観光列車とは何か。ビジネスとして語る上で、そろそろ情報の整理と定義が必要だ。 - 道南いさりび鉄道の観光列車「ながまれ海峡号」勝利の方程式
北海道新幹線の開業と当時に、道南いさりび鉄道も開業する。並行在来線の江差線を継承する第3セクターだ。5月から運行を開始する観光列車「ながまれ海峡号」の予約も盛況という。この列車の仕掛け人に誕生の経緯を聞いた。 - 観光列車の増殖と衰退――鉄道業界に何が起きているか?
近年の観光列車の増殖は、鉄道以外の業界からは奇異に見えるだろう。楽しい列車が急に増え出した。いったい鉄道業界に何が起こったか。その手掛かりを得るために、観光列車の定義と分類を試みる。今回は「定義編」だ。 - リゾートビジネスとしての観光列車はどうあるべき?
各地で誕生する観光列車。列車は運輸交通分野だけど、観光列車をビジネスとしてとらえるとリゾート、レジャー産業である。特に豪華観光列車は、日本のレジャー産業では不得手だった富裕層レジャー市場への挑戦でもある。 - 列車の車内販売を終わらせてはいけない理由
鳥取県の若桜鉄道で2016年5月から車内販売が始まった。山陰地方で唯一の車内販売だという。全国的に車内販売は縮小傾向にある中で、地方のローカル線やJR東日本の首都圏のグリーン車で車内販売を実施している。車内販売の廃止と開始、その違いは付帯サービスか付加価値か、という考え方の違いでもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.