厚労省“ブラック企業リスト”更新 労働者の「二重派遣」で中間搾取した企業など追加:社員が「砂に埋まる」恐れの会社も
厚労省の“ブラック企業リスト”が更新。法的に禁じられている「二重派遣」に手を染めた企業が追加された。大規模な賃金未払いが発覚した企業、従業員を危険な環境下で働かせた企業などもリスト入りした。
厚生労働省はこのほど、労働基準関係法違反の疑いで送検された企業のリストを更新した。2018年12月までの分として50社を追加した一方、厚労省が「掲載の必要性がなくなった」と判断した企業を削除したため、掲載企業は447社となった。
過労死ゼロを目指す取り組みの一環で、17年5月にWebサイト上に初公開。公表から1年がたったため現在は削除されているが、当初は電通本社やパナソニックなどの大企業が名を連ねる“ブラック企業リスト”として話題を呼んだ。
今回の更新では、法的に禁じられている「二重派遣」に手を染めた企業、大規模な賃金未払いが発覚した企業、従業員を危険な環境下で働かせた企業などが追加された。
従業員の「二重派遣」が発覚した企業がリスト入り
二重派遣とは、派遣会社からの人材派遣を受け入れた企業が、その人材を異なる企業に“又貸し”し、紹介料などを中間搾取することを指す。
これが発覚したのは、電子機器メーカーのオオクマ電子(熊本市)と吉野電子工業(熊本県玉名郡)。労務関連情報の専門紙「労働新聞」の報道によると、両社は派遣会社から派遣された労働者を同業の櫻井精技(熊本県八代市)に派遣し、不当に利益を得ていたという。
同紙によると、建設会社の川上電装(熊本市)も、同社の代表者が責任者を兼務する別会社の従業員を「川上電装の労働者」という名目で櫻井精技に派遣し、不当に利益を得たとしている。
今回の更新では、オオクマ電子、吉野電子工業、川上電装、櫻井精技の4社がそろってリスト入りした。
障害者含む93人に約750万円未払い、従業員が“砂に埋まる恐れ”
このほか、障害者の就労支援事業所を運営していたが、昨春に経営破綻したフィル(岡山県倉敷市)も、障害者を含む93人の労働者に1カ月分の賃金計約750万円を支払わなかった旨で追加された。
また、砂の貯蔵槽の中で従業員を作業させる際、従業員が砂に埋没する恐れがあるにもかかわらず、危険防止策を講じなかった尾張生コンクリート工業(愛知県稲沢市)や、高温の水槽に接する通路に、従業員などの転落を防止する柵を設置しなかった太陽メッキ(兵庫県尼崎市)も追加された。
5人の労働者に対して大阪府の最低賃金(時給936円)以上の賃金を支払わなかった、みんなのスーパー(大阪府四條畷市)もリストに入った。
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