もしも銭形警部が人工知能を使いこなしたら、警察はルパンを逮捕できるのか?:近未来の働き方を想像する(7/7 ページ)
日本では「熱血型上司」が人気だという。しかし、近い将来それと対極にある存在が私たちの上司になるかもしれない。人工知能だ。そのとき、部下の動きはどのように変わっているのだろうか。「ルパン三世」の銭形警部を例に見ていこう。
人工知能は、直接使用しない人の生活も変えていく。それは悲観することか?
本コラムで予想した世界では、たとえ自分が直接的に人工知能に関わっていなくとも、上司や所属組織が人工知能を使い出せば、自分の評価やキャリアに影響があることを示した。この変化は悲観すべきことだろうか?
評価が判断力ベースに移行することで、私たちは早くからマネジャーにつながる経験を積んでいけるようになったし、自らの才覚でもって道を切り開くチャンスも多く手に入れられるようになったと思う。
「つまらないし、成長に寄与しない仕事でも、数年間は修行である」などという謎理論を振りかざされるリスクは減り、公平なチャンスが与えられる可能性が高くなる。「飲み会でのおべっかが苦手だから」という理由で厳しい評価や割の合わない仕事に甘んじなければならない可能性も低くなるだろう。
平等に与えられた情報の中で、自らの責任の下、判断、行動した結果が評価されるので、競争機会はより平等になっていく。 ただし、逆に言えば、「俺の評価が低いのは上司とのソリが合わないせい」と責任逃れして自分を納得させることも許されなくなる。
ある種、人のせいにし合ってナアナアにする「甘さ」が許されなくなることは、競争環境の厳しさが増したと表現することもできるだろう。どのような変化も、チャンスと捉えるか、恐怖と捉えるかは自分次第だ。
しかし思い出されるのは、歴史上、恐らく成功をつかんできた人間は前者である。責任を持たないで逃げることを考えるよりも、責任を持たなければならないことは前提に心労とならない仕事を探すことが、これからの部下の働き方に求められることなのかもしれない。
著者プロフィール
谷村勇平(たにむら ゆうへい)
A.T.Kearney株式会社 アソシエイト
東京工業大学大学院イノベーション・マネジメント研究科修了。大手通信事業会社でサービス開発に携わった後、外資系コンサルティングファームに移り、技術開発が絡む新事業創出やチェンジマネジメントに携わる。近年は特に人工知能の企画開発及び導入、技術戦略の支援を中心に活動している。
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