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建て替えで揉める「老朽化マンション」 住民合意の「秘策」とは?人間関係がこじれると「ご破算」に(1/6 ページ)

老朽化マンションが進む一方、建て替えられたマンションはごくわずか。建て替えとなると住民合意の取り付けや資金負担の問題もあってなかなか実現しないからだ。建て替えを成功させるノウハウをプロに聞いてみた。

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 マンションや団地の老朽化が進む中で、築40年以上にもなる古いものが今後急速に増えてくる。国土交通省によると、2017年末現在で築40年超の老朽化マンションが全国に約73万戸あるが、これまで建て替えられたマンションはわずか250件程度でしかない。建て替えとなると住民合意の取り付けや資金負担の問題もあってなかなか実現しないからだ。

 そういう中で、18年に3件のマンション建て替えを成功させ、全国ナンバーワン(昨年末までにマンションの建て替え32件)の実績があるのが旭化成不動産レジデンスだ。建て替えの際に住民のまとめ役として関与した管理組合の代表2人に話を聞き、旭化成不動産レジデンス開発営業本部 マンション建替え研究所の花房奈々副所長に、建て替えを成功させるノウハウを教えてもらった。

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築40年超の老朽化マンション約73万戸のうち、建て替えられたマンションはわずか250件程度(写真提供:ゲッティイメージズ)

大規模修繕から建て替えに

 東京都調布市の調布富士見町住宅(1971年に建設された5階建てのエレベーターのない176戸の団地住宅)の事例を紹介しよう。この住宅の建て替えで最初から管理組合の副理事長として積極的に関与してきたのが多田陽子さんだ。06年にこの団地に引っ越してきた。当番制で07年に団地の自治会役員となり、08年に管理組合の理事に選任された。当時、管理組合では大規模修繕が議題となっていた。修繕か建て替えかを巡っていろいろな意見が出ていたという。

 団地の理事を任命され、議題となっていた大規模修繕問題を担当した。修繕積立金は2億円あったが、管理組合の運営を巡ってもめたことがあったという。その後、08年1月にできた「住宅を考える会」が住民にアンケートをすると、(1)建物の老朽化・耐震不足(2)高齢者が多いにもかかわらずエレベーターがない(3)団地住民の高齢化による管理組合役員の人材不足(4)空き家や賃貸が増えている――などの問題が提議され、回答者の80%が大規模修繕ではなく、建て替えを検討してほしいという結論になった。

 そこで、08年3月に臨時総会を開いて「建替え検討委員会」を立ち上げた。その後、同年8月の臨時総会において(1)「建替え推進委員会」の設置、(2)「街づくり準備会」の立ち上げ、(3)「事業協力者」の選定、という3議案について承認を得た。事業協力者については、アンケートで上がった数件の候補の中から、「一団地の住宅施設解除」などの実績がある旭化成不動産レジデンス(当時旭化成ホームズ)を選定し、管理組合の提案とした。このあと、調布市側と地区計画(周辺と同じ容積率にする)の緩和などで何度も協議をすると同時に、団地内では住民への勉強会、説明会を十数回開いて建て替えへの理解を求めた。

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マンション建替えの実施状況(国土交通省のWebサイトより)
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