「睡眠時間が長い社員」に報酬 異例の福利厚生はなぜ生まれ、どんな効果を生んだ?:ブライダル企業「CRAZY」社長が語る(2/3 ページ)
ブライダル企業のCRAZYは、18年10月から「睡眠時間が長い社員」に報酬を付与する福利厚生制度を始めている。なぜこれを導入したのか。導入から5カ月でどんな変化があったのか。森山和彦社長が会見を開き、報道陣に語った。
報酬のポイントは社食などで使える
報酬の内容は、6時間以上の睡眠を5日間連続で達成した場合は500ポイント、6日間連続の場合は600ポイント、7日間連続の場合は1000ポイント。休日の夜更かしが業務に悪影響を及ぼすケースもあるため、営業日だけでなく休日の夜も測定対象となり、1カ月間毎日計測した場合は「皆勤賞」として1000ポイントが付与される。
価値は100ポイント=100円。社内のカフェや食堂で、コーヒーやおにぎり、スイーツなどを購入する際に使用できる。CRAZYの担当者は「当社は添加物などを用いない食品を社内で提供しているため、たくさん眠ることで健康的な食品が手に入り、健康によいサイクルを回せる」と自信を見せる。
同社のこだわりが込められた睡眠報酬制度だが、社内にすんなりと受け入れられたわけではない。ある男性社員は「自分は思いっきり働きたいので、この制度は使わない」と主張し、スタートしたばかりの時期に“拒否”。「アプリの起動をうっかり忘れた」などの理由で、睡眠の計測になかなか慣れない社員も一部いたという。
社内にどんな効果をもたらした?
だが、森山社長が社内外で告知し、メディアが報道した影響などもあり、初月(18年10月)は社員の6割に当たる53人が計測。計測者の平均睡眠時間は5時間49分(従来比+19分)に改善され、総計で1万1000ポイントが付与された。中には一人で4000近いポイントをためた“猛者”もいたという。
一方、繁忙期のクリスマスが近づくにつれて社員の負担が増えた影響で、計測者数は11月は45人、12月は39人に落ち込んだ。ただ、計測者の平均睡眠時間は、11月は5時間30分(前月比−19分)だったのに対し、12月は6時間8分(同+38分)と大幅に向上。計測が完全に習慣化した層は繁忙期においても工夫し、睡眠時間を捻出していることがうかがえたという。
繁忙期が過ぎると計測者も少しずつ戻り、19年1月は44人、2月は49人が睡眠時間を記録。平均睡眠時間は1月が6時間25分(+17分)、2月が6時間17分(−8分)と比較的堅調に推移した。2月には、毎日よく眠って4100ポイントもの報酬をため、社内での食事を楽しんだ人もいたそうだ。
CRAZYの担当者は「かつては(繁忙期は)仕事ありきで、余った時間を睡眠に充てる人が多かったが、いまは睡眠時間を確保することを重視し、そこから逆算して1日の仕事内容を決める人が増えた。『無理に残業せず、朝早く出社して頑張る』と働き方を変えた人もいる」と明かす。
また森山社長は、こうした睡眠の記録をマネジメントに生かす取り組みも始めており、「産業医とデータを共有し、眠れていない人が多いチームの人員増を検討したり、睡眠不足の社員のタスクを減らしたりと、労働環境の改善につなげている」と明かす。
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