連載
日本車の未来を考える:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
中国が台頭する一方で、日本経済は自信を失ったままだ。2019年の今、そうした状況を自動車業界の観点からもう一度整理し直してもいいのではないかと思う。
2008年、米国を震源地として世界経済を混乱に陥れたリーマンショック以来、世界の経済地図が書き換わった。日米という2つの経済大国は深刻な不況に陥り、それまでのように世界経済をけん引できなくなったからだ。
そこで突然救世主になったのは中国だった。中国政府は世界同時不況が自国に及ぼす影響を阻止するため巨額の財政出動に踏み切った。結果としてまさに恐慌の淵にあった世界経済を中国が救ったのである。
プラザ合意以降の自由経済をけん引してきた日米という2つの国がすくんで動けなくなっているとき、共産主義政府の中国が、結果的とはいえ世界経済を救う規模の財政出動を断行したことは興味深い。こういうケインズ的政策は自由経済の中では左寄りの政策に位置付けられる。そういう意味で言えば中国の政治体制に相応しい手法だとも言えるし、結果的にそれが本質的には共産主義と対立する自由経済を救ったと考えると、何とも形容しがたい気持ちになる。2つの顔を持つ中国ならではの話だと思う。
以来中国は経済大国としての地歩を固め、米国と覇権を競い始めた。
一方、日本はと言えば、11年に東日本大震災に見舞われるなど厳しい状況が続き、経済大国としての相対的な地位を落としていった。
世界第2位の経済大国の地位から滑り落ちて以降、日本経済は自信を失ったままだ。19年の今、そうした状況をもう一度整理し直してもいいのではないかと思う。
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