日本車の未来を考える:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
中国が台頭する一方で、日本経済は自信を失ったままだ。2019年の今、そうした状況を自動車業界の観点からもう一度整理し直してもいいのではないかと思う。
多極化戦争
そういうマーケットの中で日本メーカーには1つ異質な点がある。現在の日米欧中印の5極に対して、ほとんどのメーカーが複数のマーケットを押さえているのだ。個別に見ると多少例外はあるが、ざっくりと見ると日米の両マーケットを押さえており、加えて3極目として中国なりASEANなりを手札に加えようとしているのである。そしてだいたい欧州マーケットに弱い。
日米タイプの代表はトヨタとホンダとスバルだ。ただしトヨタは中国攻略を始めつつあり、ホンダはそれに先んじて中国での拡大戦略を進行中だ。
マツダは日本のメーカーとしては例外的に欧州で健闘しており、グローバルでのマーケットバランスが良い方だが、ここのところ米国への依存が強まりつつある。
スズキは言うまでもなく日印が中心だが、実は欧州もそこそこ強い。
日産は日本メーカーにしては珍しく、日本のマーケットを見切り始め、現在はインフィニティブランドでの米国と、日産ブランドでのASEAN、そして中国という具合で脱日本を目指しているかに見える。
ダイハツは日本とASEANに根を張っている。
こういう話を聞いて、どこの国のメーカーも同じではないかと思う人がいるだろうが、そうではない。
米国のメーカーで国外で成功しているメーカーは皆無。欧州のメーカーも日米で成功しているメーカーはない。「ダイムラーやフォルクスワーゲンはどうなの?」と言う人もいるかもしれないが、日本のメーカーほど他国で売っているわけではない。ダイムラー(ベンツ)は少しビジネスのやり方が異質で、規模を見るとグローバルで200万台程度と台数で見る限り決して多くはないのだが、利益率が高いことでそれをカバーしている。平たく言えば高級車メーカーなのだ。
という中で、欧州メーカーは初めて2極を取れる見込みがでてきた。それが中国マーケットである。欧州以外の大規模マーケットを取り込める見込みがあるから、今欧州メーカーは中国マーケット攻略に全力で取り組んでいるのだ。
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