なぜ「スガキヤ」は中京圏で繁栄した? 「だし」の哲学と強固なビジネスモデル:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
中京圏で熱烈に愛される「スガキヤ」。ラーメンとソフトクリームの2枚看板で成長してきた。地元で熱烈に支持される理由とは?
スガキヤの魅力は安さ
ラーメンが1杯320円(税込、以下同)、ソフトクリームのレギュラーは150円であり、両方を注文しても470円。ワンコインで食べられる。
がっつり食べたい人向けには、チャーシューが1枚から5枚に増量され、タマゴが入った「特製ラーメン」や「野菜ラーメン」(いずれも450円)がある。
季節商品の「味噌ラーメン」(450円)などもあり、こちらもワンコイン以内。夏には冷やし中華が提供されるが、冷やし中華にマヨネーズをかけるのはスガキヤが始めたという説が有力だ。
平日は、ラーメン、五目ごはん、サラダのセットが500円。休日でも590円だ。
ぜんざいにソフトクリームを乗せた「クリームぜんざい」も、甘味屋時代をほうふつさせる人気のスイーツで、230円である。
ラーメンは創業当時30円だった。創業者の「安くておいしいものを提供したい」という志を受け継ぎ、雑誌1冊の値段を基準としている。
現在、『週刊文春』や『週刊新潮』の値段は420円。コメダ珈琲のコーヒーは1杯420〜440円である。実際は、週刊誌やフルサービスの喫茶店のコーヒーより安く、ラーメンを提供している。
ラーメンはファストフードとの考え方から、早くゆで上がる麺の改良を続けてきた。クイックで提供されるのもスガキヤの特長だ。
「省七釜」という一度に複数の麺を調理できるゆで麺機を、1980年にメーカーと開発。水道代や光熱費を削減し、提供までの時間ロスをなくし、混雑時の売り逃しを防ぐ仕組みも構築した。
創業者は倹約家
創業者は自ら“ケチガキヤ”と公言するほどの倹約家で、どうしたら節約できるかを常に考えていた。セントラルキッチンをつくれば流通を簡素化でき、利益率が向上する。徹底的なコスト意識があったからこそ、安価な商品が販売できるのだ。
また、名物の「ラーメンフォーク」は割り箸の大量消費による環境問題を解決するために、食器メーカーのノリタケと共同で1978年に開発された。お箸を使わなくても食べられ、レンゲを使わなくてもスープが飲める優れものだ。ラーメンフォークの歯が右に向いていたため左利きの人が使いにくかったが、2007年には真っすぐに歯の向きを直し、ユニバーサルデザインに変更された。ラーメンに限らず、そば、スパゲティなど麺類全般に活用できる。
なるべくゴミを出さないこうした発想も、倹約精神から生まれたものではないだろうか。このラーメンフォークはデザイン性が評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)でも販売されている。
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