スシローの進化についていけなかったかっぱ寿司:1人負けした理由(1/5 ページ)
かつて業界をリードする立場だったかっぱ寿司が、競合他社に次々と追い抜かれている。逆転を許してしまった背景にはいったい何があるのだろうか。
特集「数字で納得! あの企業が“負けた”理由」:
なぜあの企業は競合他社と差がついてしまったのか。知っているようで意外に知らない戦略の違いを「会社の数字」を用いながら比較する。
企業の勝ち負けは業績だけで判別できない。ある数字に注目することで、意外なところで明暗が分かれたケースも本特集で紹介する。
かっぱ寿司が回転すしチェーンで“1人負け”している。かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの売上高は794億円(2017年3月期連結)、当期純利益は58億円の赤字だった。一方、売上高で業界トップのスシローを経営するスシローグローバルホールディングス(HD)の売上高にあたる売上収益は1564億円(17年9月期連結、国際会計基準)、当期純利益は69億円の黒字だった。
かっぱ寿司はかつて業界をリードする立場だった。売上高は業界トップクラスで、タッチパネル方式や高速ですしをテーブルまで運ぶ「特急レーン」を相次いで導入していた「業界の革命児」だったのに、どうして競合他社に抜かれてしまったのだろうか。
かっぱ寿司の誕生から成長までの軌跡
かっぱ寿司が創業したのは1973年。創業者は流しそうめんのように桶に入れたすしを水に浮かべていた。水に浮かぶ桶がかっぱの皿に見えたことから店名を「かっぱ寿司」としたという。この創業時のエピソードについて、カッパ・クリエイトの広報担当者は「『そのように言われている』ことは認識しております(現時点では、事実かどうかは確認できません)」と回答した。
79年から回転すしのチェーン展開を開始。96年に手打ちうどんの「得得」を子会社化し、99年4月以降には大型店の出店も開始した。03年には総菜を中心に扱う新業態「かっぱ厨房」をスタートさせるなど、積極的に規模拡大を進めていた。
事業は順調に成長を続けた。公開されている過去の事業報告書を見ると、01年度には店舗数が173店にまで増加している。99年度の売上高は211億円だったが、わずか2年で394億円に達し、当期純利益も4億円から23億円に増加した。事業報告書の文面には「消費者ニーズに敏感に対応した施策を推進してまいりました」「着実にリピーターは増加しており、各地において認知度の向上と地位の確立が図られております」などと自信にあふれた文面が並ぶ。
その後、業績が低迷した時期もあったが、着実な成長を続けてきた。
関連記事
- 「指混入」だけじゃない 幸楽苑が日高屋に負けた理由
ラーメンへの異物混入事件でブランドイメージを大きく損なった幸楽苑。この事件が現在に至るまでの不振の原因として指摘される。しかし、本質的な敗因は別のところにもあった。 - 後発の「ゆで太郎」がそば業界首位になった理由
「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」のそばを提供して急激に店舗数を増やしているのがゆで太郎だ。今回は、後発ながら富士そばや小諸そばを追い抜く原動力となった同社のこだわりと戦略を紹介する。 - 「はま寿司」が急成長! 「かっぱ寿司」を追い越せた理由
「スシロー」「くら寿司」「かっぱ寿司」を抜き、店舗数でトップに立った「はま寿司」。脱落しつつあるかっぱ寿司とは何が違うのか。外食ジャーナリストの長浜淳之介氏が読み解く。 - なぜコロワイドは「かっぱ寿司」を買ってしまったのか
かっぱ寿司の経営不振が続けば、コロワイドの屋台骨が揺るぎかねない状況だ。なぜコロワイドは「買収するメリットよりはリスクの方が大きい」(関係者)かっぱ寿司を買ってしまったのだろうか。 - 「かっぱ寿司」前社長、スピード辞任の理由は「過去のコンプラ違反」
関係者が、カッパ・クリエイト前社長がスピード辞任した理由を明かした。カッパ以前に在籍していた企業でコンプライアンス違反があったためという。後任には、アトムの小澤俊治社長が就くことが内定しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.