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バッテリースワップ式EVへの期待と現実:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
時期はともかく、EVは必ず普及する。ただしそのためにクリアしなくてはいけないのがバッテリーの問題だ。EVの性能を決める心臓部品でもあるバッテリーは、高価な部品である。ではどうやって安いバッテリーで充電の待ち時間を短縮するか? という話になると人気の説の一つが、バッテリースワップ方式。ここに可能性はあるのだろうか?
バッテリー充電待ちをなくすアイディア
さて、日本の話だ。わが国でのEV普及の障害となっているのは、1番がバッテリー供給という物理的制約、2番目がその原因となる価格、3番目がさらにその原因となる航続距離と充電時間だ。自動車の動力源としてのバッテリーは高価過ぎ、どうしても車両価格が高くなる。それでは売れないからバッテリーメーカーは生産設備を増やさない。そして航続距離と充電時間にぜいたくをいわなければ、つまり重量当たりエネルギー(エネルギー密度)にぜいたくをいわなければバッテリーは安く作れる。
ではどうやって安いバッテリーで充電の待ち時間を短縮するか? という話になると人気の説の一つが、バッテリースワップ方式だ。
これはガソリンスタンドに、前もって充電済みのバッテリーを用意しておいて、電欠したらバッテリーを充電済みのものと交換するという方法だ。レースのピットストップでタイヤ交換をするようにバッテリー交換をするので、充電時間=待ち時間にはならない。そしてこの方法は、実際、中国のNIOというメーカーが、交換時間わずか3分というシステムを作っている。
しかしこのバッテリースワップ方式は、過去に米Teslaを含む数社がトライして、失敗の末、撤退済みのアイディアであって、そうそう簡単な話だと思えない。問題点を挙げてみよう。
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