世界的にキャッシュレス化が進んでいるのに、なぜ米国は反発するのか:大都市で規制(4/4 ページ)
世界的にキャッシュレス化の動きが加速している。こうした動きの中で、反発する国がある。米国だ。ペンシルベニア州ではキャッシュレス型店舗を規制する法律が可決され、この動きは広がりつつ……。
誰もが恩恵を受けられるようになれば
スウェーデンの社会環境は、キャッシュレスの導入を考えている国々には参考になるだろう。
実は米国にも、キャッシュレス化の流れのなかで貧困層などの課題をクリアできるヒントとなるようなケースも出てきている。その一例が、ジョージア州アトランタにある「メルセデス・ベンツ・スタジアム」だ。19年のスーパーボウル(NFLの優勝チームで争われる優勝決定戦)の会場となった、比較的新しいスタジアムである。
その「メルセデス・ベンツ・スタジアム」が、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のスタジアムでは初となる、完全キャッシュレスに生まれ変わった。19年3月10日より、チケットやスタジアム内でのフード類の支払いが、すべてカード決済に。そこで、カードを所有していない人のために、10機の自動発券機を設置。手数料なしで現金をプリペイドカードに交換できるようにした。
キャッシュレス化された直後に開催された、プロスポーツの試合ではオペレーションも問題なく進んだようだ。そして、スタジアムの発表によると、現金をプリペイドカードに交換できる自動発券機を利用した人は、全入場者の1%未満だったという。
しかもこんなメリットも生まれた。コストが下がったことで、スタジアム内のフードを安く提供できるようになったことだ。さらに今後は、混雑時の列の緩和なども期待されている。
日本でも、球場内でのキャッシュレス化が進みつつある。プロ野球「東北楽天ゴールデンイーグルス」とJリーグクラブ「ヴィッセル神戸」のホームスタジアムで、19年開幕戦からの現金決済を原則キャッシュレス化する。中学生以下の子どもにEdyカードをプレゼントするなど、普及にチカラを入れている。
これから、さまざまなビジネスがキャッシュレスになっていくのは、避けられない時代になってきている。キャッシュレス化を推進するテクノロジーも日々進化しているため、より違和感なく社会に浸透していくに違いない。
ただその便利さの裏には、米国で見られるような貧困層の問題などがからんでくる。便利な新しいテクノロジーやシステムが普及するのは素晴らしいことだが、誰もがその恩恵を受けられるようになれば、なお素晴らしいのだが。
著者プロフィール:藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
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