世界的にキャッシュレス化が進んでいるのに、なぜ米国は反発するのか:大都市で規制(3/4 ページ)
世界的にキャッシュレス化の動きが加速している。こうした動きの中で、反発する国がある。米国だ。ペンシルベニア州ではキャッシュレス型店舗を規制する法律が可決され、この動きは広がりつつ……。
キャッシュレス化のメリット
こうしたキャッシュレス化に対する否定的な見方がある一方で、テクノロジーの進歩により、多くのビジネスがキャッシュレス化していくのは避けられない状態になっている。
キャッシュレス化にするメリットのひとつは、ビジネスの効率がよくなることだ。従業員が現金のやり取りに時間を取られることがなく、支払い時の処理を手早く行うことができる。そのため、混雑が緩和され、サービスの向上にもつながる。
従業員がレジを閉める際に現金を数えたり、売り上げを計算するなど、手間のかかる作業から解放されるというメリットもある。また、キャッシュレス化にすることで、安全性も向上する。金融機関に足を運んで売上金を入金する必要もなくなるので、輸送時に護送車や警備員を配置してセキュリティーを強化する必要もなくなり、従業員や店が強盗に狙われるリスクも少なくなる。
消費者もどんどんキャッシュレスの生活に傾きつつあるようだ。実は、現金で買い物をする人の数が、だんだんと減ってきている。米政府が18年に行った調査では、1週間のうち現金を全く使わない人が、29%を占めた。同様の調査で、15年は24%だったのと比較すると、米国人が徐々に現金離れしているのがうかがえる。
お財布に現金を入れていなくても心配しないという人は、15年に39%だったが、18年には46%に増えた。つまり、現金を持たなくても、カードなどで支払いができるので、問題ないと考える人が多くなっているのだ。
ちなみに、キャッシュレス化が世界で一番進んでいるのは、スウェーデンだ。ほとんどの支払いは、カードやモバイル決済などで行われるため、現金はGDPの1%しか流通していない(現金が主流の日本では20%ほどで、米国では8%)。
スウェーデンは、23年までに完全にキャッシュレス化することを目標にしているが、すでに実現可能な段階にまで進んでいる。両親の許可が必要だが、スウェーデンでは7歳になれば、銀行からデビットカードを発行してもらうことが可能だ。幼い時から、キャッシュレス社会に適応する準備をしていることになる。
デビットカードがあれば、たとえ少額でもほとんどの場所で使用することができる。現在、80%の取引がキャッシュレスで行われているため、現金を目にすることのほうが珍しくなっている。
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