続・スバルよ変われ(後編)――2040年のクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
前編の「安心と愉しさ」を実現するための、スバルの新たな3つの軸と、未来のスバルへの情報開示をどうしていくのかという話に続き、2030年、40年のスバルはどうなるか。STI社長兼スバル技監である平川良夫氏へのインタビューから。
池田 マインドを束ねてベクトルにするという意味では、目前の問題はスバルの中で自信を失っている人をどうするかですよね。そこについての内部的なコミュニケーションをどうするかについては何か考えていらっしゃいますか?
平川 今まさに、四角四面の会話ではなく、もう少し俯瞰(ふかん)して、やれることやれないこと、できていることできていないこと。ありたい姿を定量的に文字にする、こういう商品をいついつまでに実現しましょうということを今やってます。
池田 私が一番心配しているのは、下の人たちが勝手に自重してしまうことなんです、上の人はだいたい「言ってもいいんだよ」と思っています。だけれど下の人たちが勝手に縮こまってしまう。組織では起こりがちなんですよ。
今トヨタはトヨタイムズってやってますが、あれで労使交渉を動画で公開しています。下からトップに向けた厳しい質問も、勘違いの緩い質問も全部オープンです。そうやってオープンな場では上も下も何を言うかどういう態度かが全部ガラス張りです。みんなに見られている。労使交渉みたいな特殊な世界で許容されてきた時代遅れな発言は、全部世間に筒抜けになって、今の世間の常識で判断されるんです。
トヨタはいまほかでもこういう対話をオープンにしていて、ここで手を上げて質問する人は立候補制です。いままでは職制で課長以上みたいに選んでいましたが、そういう人は仕事で来ているだけで、そこに時間通りに来て黙って座っているのが仕事なんです。そして当然帰ってもそこで見聞きしたことを拡散しない。だったらそんな人は来なくていい。聞きたい人だけ来いと。そして聞いた興奮を伝えてくれと。だからスバルも改革の話を聞きたいヤツだけ来いって言った方が良いコミュニケーションが取れるんじゃないでしょうか?
平川 分かります。今ウン万人をここに連れてくるわけにはいかないので、まずはSTIでやってます。もちろん日曜日ですから、個人の都合で来られない人はいますけれど、できる限りこの場に来て、ロイヤリティファンの人たちと接してもらおうと。そうするとやっぱり何かを感じるんですよ。そうして自分たちの組織にとって辛いことを、やっと自分たちで会話できるようになるんです。だからこういう場をもっと増やして、社員自らが変わっていかれる場を作って、お客様も一緒に改革をしていただきたいと思うんです。
池田 トップの経営陣はそりゃもう必死ですよ。これだけの人たちを食わしていかれるかどうかといえば、足の裏を火で炙(あぶ)られているようなものです。下の人たちも甘く見るような余裕はない。だけれども中間の人たちが問題なんです。いろんな経験とか権利とかが自分たちの鎧(よろい)になってしまっていて、なんとかなるさと思っているケースがやっぱりある。この人たちをどうするかが一番の課題だと思います。
スバルは今、われわれが思う以上にダメージを受けている。因果応報な部分ももちろんある。ただし、償うべきものを償って、変えるべきものを変えたら、もう一度スバルにはよみがえって欲しい。スバルは日本の基幹産業である自動車を支える一翼なのだから。
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