続・スバルよ変われ(後編)――2040年のクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
前編の「安心と愉しさ」を実現するための、スバルの新たな3つの軸と、未来のスバルへの情報開示をどうしていくのかという話に続き、2030年、40年のスバルはどうなるか。STI社長兼スバル技監である平川良夫氏へのインタビューから。
池田 吉永さんがおっしゃったような、軽自動車は価格勝負が本質なのでやめて、これからは高付加価値の商品で勝負をしていくのだと。生産キャパシティ的にもそういう状況にあるこれからのスバルの方向を考えると、やっぱり1台飛び抜けたフラッグシップは必要だと思うんですよ。そのためのミッドシップスポーツカーだと。
ただそれを本体でやると、衝突安全も環境規制も大変になるんで、STIを少量生産メーカーという位置付けにして、スバルのこういうフラッグシップを引っ張る会社にしたらどうかなと。型式認定を取らず持ち込み車検でもその台数ならやれるじゃないですか?
平川 実は、今回アメリカの官庁に対してはそれをやってます。EPA(米国環境保護庁)やNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)に対しても我々は少量生産メーカーとして登録しています。
池田 そういう少量生産なら燃費が悪くてもいいじゃないですか?
平川 いやいや、それは土台ですから。最低限の所はクリアしないといけません。理念は大事です。
池田 これは私の方がお恥ずかしい発言でしたね。なるほど。ただ高付加価値の商品にシフトしていくとすると、スバルの総合力がとても問われます。販売店の改革もやらなくてはならないし、CI(コーポレートアイデンティティ)もやらなくてはならないかもしれない。そういう新しいスバルの核となるクルマとして、新しいフラッグシップが必要だと思うんです。
自動車メーカーってのはものづくりの会社ですから、ハードウェアだけでいいのかは今問われていることですが、だからといって、中核にハードウェアがなければ話になりません。やっぱり核にそういうクルマがあるべきだと思うのです。
平川 おっしゃる通り。形容詞や副詞を並べてもしかたないんですよね。
池田 という前提に立つと、やっぱりプロダクトベースのロードマップを中経でちゃんと書いていかないといけないと思います。2030年、2040年にはスバルはどんなクルマを作るのか? それを見せていただきたい。
空飛ぶ車が1つくらいあってもいい
平川 できる限り三次元で移動できるクルマにしたいですよね。お客さんもそう思っているんじゃないでしょうか?
池田 なるほど、法律だなんだの話はおいておいて、空飛ぶクルマを持つのだと。
平川 1車種くらいはそういうクルマがあってもいいじゃないですか? なんのために航空宇宙部門があるんですかってことです。ただまあご存知の通り、いまいまというと、航空は二重安全、三重安全は当たり前の世界なので、簡単ではないです。ただマインドを束ねてベクトルにしていかないとたどり着かないですから。
池田 そういうプロジェクトチームみたいなものはもうあるんですか?
平川 一歩一歩です。
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