希望した客はいつもタダ! 奈良のトンカツ「無料食堂」が繁盛する深い訳:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/6 ページ)
奈良に「希望者はいつでも代金無料」というトンカツ店がある。純粋な社会貢献で取り組む同店が繁盛する秘密とは?
もともと「有料で食べたくなる」繁盛店
筆者は18年12月に同店を訪れました。行ってみて驚きました。なぜならまるかつさんは、「本当の繁盛店」だったからです。この日、私はお昼ごはんを午後2時まで我慢して店に向かいました。仮に混んでいたとしても、この時間ならさっと入れるだろうと思ったからです。
奈良駅からバスで10分ほどの場所にありました。店は外から見ると普通のロードサイド型の飲食店という雰囲気。特別な店という感じではではありませんでした。
着くと、午後2時を過ぎているのに行列ができています。私は30分待ってようやく席に着くことができました。
私が驚いたのは、トンカツのおいしさに加えて従業員のサービスレベルも高かった点です。一人一人に丁寧に接客をしていてとても気持ちがいい。きちんとあいさつし、丁寧に注文をとり、レジ対応時に次回来店のクーポンを渡す。飲食店のルーティンの接客サービスをまじめにきちんとやっていました。店の外までお客さんを見送ることもありました。
私の座った席がレジの横だったため、支払いをずっと見ていたのですが、その時は全員がお金を支払って帰っていました。やはり、無料食堂があくまで生活や食事に困っている人向けの活動として成立していることも分かりました。
実は高めな日本の相対的貧困率
内閣府が相対的貧困率を国際比較した10年のデータによると、日本の相対的貧困率はOECD加盟国の平均を上回り、先進国の中では米国などに次いで高い貧困率(16.0%、日本は09年のデータ)となっています。
日本の子どもの相対的貧困率は1990年代から上昇傾向にあり、2009年には15.7%になっています。子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は14.6%であり,そのうち大人が1人の世帯の相対的貧困率が50.8%と、大人が2人以上いる世帯に比べて非常に高い水準です。一人親家庭など、大人1人で子どもを養育している家庭で特に経済的に困窮している実態が明らかなのです。
関連記事
- 「バイトテロ」が繰り返される真の理由 大戸屋一斉休業で問う
3月12日に大戸屋が一斉休業するなど社会問題化する「バイトテロ」。そのメカニズムと真の対応策について専門家に聞いた。 - 目指せ蛍の光 “つい帰宅したくなる”新曲、USENが制作
USENがオフィス向けの「帰宅したくなる」効果を狙った曲を制作。職場の人間の帰宅に至る心理を分析、3部構成で自然と帰りたくなるよう促す。 - あなたは「上司の命令なし、社員が何でも決める」職場で働きたいか
企業で上司が一方的に命令しない「自律的」な職場が広がっている。給料や事業方針も社員が話し合ったり自己決定。苦労して例のない取り組みに挑戦する理由とは? - 中国人客は日本で「取りあえずビール」をやってみたい…… なぜ?
春節を前に中国人向けSNSのつぶやきを調査。2018年間の「訪日時に食べた物」を分析した。唐揚げやビールなどちょっと意外な物がランクイン。 - 中高年社員を確実に待ち受ける“絶望への落とし穴”とは 調査で解明
企業でささやかれる「働かない中高年」問題。その背景には個人ではなく構造的問題が。調査から迫ったパーソル総研研究員に直撃。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.