中高年社員を確実に待ち受ける“絶望への落とし穴”とは 調査で解明:エリートほど陥りやすい?(1/4 ページ)
企業でささやかれる「働かない中高年」問題。その背景には個人ではなく構造的問題が。調査から迫ったパーソル総研研究員に直撃。
若い時は社内でエース社員として活躍していたのに、中高年になると途端にやる気が落ちてしまう。若手社員から「バブル入社の先輩は使えない」などと陰で言われたり、逆に自分はまだまだ活躍していると思っていたのに突如、役職から外されたり……。
日本の企業社会で近年、特に40〜50代の中高年社員の仕事への意欲やパフォーマンスが低下しているのではないか、という議論が活発になっている。2018年には一部メディアで「さよなら、おっさん」などと題したキャンペーンが話題にもなった。「バブル世代やかつての団塊世代は簡単に入社できたため、社内でくすぶっている人が多い」といった紋切り型の言説も横行している。
こうした「中高年社員がちゃんと働いていない」といった議論は、世代間で主張が対立したり、どうしても自分の周辺の印象論で偏見を持ちがちだ。法政大学大学院政策創造研究科の石山恒貴教授とパーソル総合研究所(東京都港区)は、いわゆるミドル・シニア(中高年)の会社員の働き方について17年、計約4700人を対象にした調査を実施。18年末に『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(ダイヤモンド社)として出版した。
本書では、対象となったこのミドル・シニア社員が直面する「壁」と、どう対処すべきかが調査結果から具体的に述べられている。実は、社内で若い頃ある程度活躍したエリート社員ほど、中高年になってこの停滞に阻まれる可能性が高いという。
ひょっとするとあなたにも訪れるかも、あるいは既に訪れているかもしれない「中高年社員の絶望」の、本当の原因と処方箋は何か。本調査に参加したパーソル総研の主任研究員、小林祐児さんに直撃した。
――本書では40〜54歳の中高年社員を対象に、仕事のパフォーマンスが落ちたり本人の中でもやる気が落ちて失望感にさいなまれる問題を扱っています。仕事へのパフォーマンスは「44歳〜45歳」と「50歳〜51歳」の2タイミングで落ちる結果になったなど、データをもとにこの停滞感を解き明かそうとしています。そもそもなぜこの問題を数量的に調査しようとしたのでしょうか。
小林: 企業の人事担当者たちから聞いたのですが、彼らが課題として感じているのが「賃金が上がってきた(中高年の)人たちのパフォーマンスが、その賃金に見合っていない」という問題でした。今までは出向や希望退職というやり方がありましたが、人手不足でリストラもできない。
今やみんな、65歳か70歳まで恐らく働き続けることになる。40代後半でくすぶり始めたらまだ20年もあるのです。特にバブル世代ですね。企業側からすると「昔は元気で活躍していたのに……」という課題意識があるのです。
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