中高年社員を確実に待ち受ける“絶望への落とし穴”とは 調査で解明:エリートほど陥りやすい?(2/4 ページ)
企業でささやかれる「働かない中高年」問題。その背景には個人ではなく構造的問題が。調査から迫ったパーソル総研研究員に直撃。
「社内で働かない中高年」、個人の問題ではない
――世間でも「働かない中高年」がたびたび話題に上ります。
小林: (新聞社で働かない人を描いた)「働かざる者たち」(小学館)という漫画も出ました。働かないミドル・シニアが職場にいることは、新しく会社に入ってきた人にとって負の効果を生みます。でも、下の世代から「働かないおじさん」に見える人、個人の問題にしてしまったら絶対に解決しません。それはただのガス抜きでしかない。この問題の要因をきちんと考えている言説があまりにないと感じていました。
――この問題が個人のせいではないとすれば、背景にはどんな社会的要因があるのでしょうか。
小林: 日本型雇用、いわゆる年功序列がうまく回っていた時代は相当長かったと言えます。昇進の機会を長く与え続ける組織は、国際的にみても日本くらい。欧米ではキャリアパスが若い段階でエリートかそうでないか、すぐ分かれます。でも日本では、同じ階級で(新卒が)入社してずっと長い間、「部長になれるかもしれない」といった可能性を会社が与え続けてきたのです。
こうした仕組みは従業員にも企業にもメリットがありました。社員はその組織に居続けることで、実際にほぼ全員が部長か担当部長くらいにはなれた。また、日本企業の特徴として新卒の採用数を簡単に減らす点があります。不景気の影響を新卒数で調整できるため、入り口を狭めることで上の世代の雇用を守ってきた。企業の景気対策としてもメリットがありました。その結果、バブル入社組の人数がとても多くなったのです。
ただ高度経済成長期はそれで回っていたのですが、ひずみが今最も出てしまっている。例えば、年功的な賃金の(上がり下がりの)カーブは多くの企業で是正が始まり、下げるようになってきました。成果主義も中途半端な形ですが入ってきており、年功序列を廃止する大きな流れになっている。
これらの要因から今50歳前後の人が会社で浮いて見えるのでしょう。昔ほど会社はポストを用意できず、部下なし管理職がどこでも問題になっている。景気が拡大してポストが増え続ける前提でうまく回る制度だったため、今そのツケが来ているのです。
「働かないおじさん」と言われている中高年社員は景気の流れに乗ってきただけで、その人が悪い訳ではないのです。若い人が「あいつらは働かない」と言うのでは解決しない。同じ環境なら皆がそうなっていたでしょうから。
特にこうした社員は社内で仕事のパフォーマンスがそれほど高くない上に、会社に不満を抱えている。なのに「転職市場に俺は相手にされない」とも思っていて、転職志向はとても低い。そこからどう活躍してもらえるのか、というのが今回の調査の切り口でした。
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