中高年社員を確実に待ち受ける“絶望への落とし穴”とは 調査で解明:エリートほど陥りやすい?(3/4 ページ)
企業でささやかれる「働かない中高年」問題。その背景には個人ではなく構造的問題が。調査から迫ったパーソル総研研究員に直撃。
年齢で役職を奪う「ポストオフ」
――中でも、こうした中高年社員が「使えない」状態に陥る要因として、一定の年齢に達すると、さらに昇進する人間を除いて一律で役職から降ろす「ポストオフ(役職定年)」という制度が、特に重大だと挙げられていますね。長く組織で評価されてきた社員だからこそ感じる絶望感はすさまじいと感じます。
小林: 55歳、金融業界なら50歳でよく定められています。景気変動と人手不足によるきしみを受けて企業が行っている制度ですが、これはかなり過激で強硬な人事策です。賃金カーブの問題を強制的に解決してしまっている。
やられる側としては、「自分は能力があって管理職なのに、年齢という理由で切られるのか」と、そのショックたるや……。今回の調査でも「ポストオフ後に感じた気持ちは?」という質問に、当事者からは「疑問と喪失感で夜も眠れない日が続いた」といった回答がありました。
企業は今、こういう形でしか問題を解決できていない。企業も個人も苦しむ中、別の対策が必要なのです。
――ただ、ポストオフ自体は社内でちゃんと示されている人事制度のはずです。本調査の「ポストオフ前にしていた準備は?」という質問では、2割以上が「考えない」、3割以上が「準備なし」と回答しています。訪れるであろう未来に準備していない人が少なくないのはなぜでしょうか。
小林: ポストオフとは出世した人向けの制度なのです。同期の中でもちょっと仕事ができ、ポストがそれについてきた人ですね。「今までずっと活躍し続けていて、会社も役職を与えてくれた。自分はいくら何でも大丈夫だろう」と、期待交じりの予想を立ててしまうのでしょう。目の前の悪いことを直視しなかったり、役職者は忙しくて日々の業務に目線がいってしまうのかもしれません。
同期との「数百円の給与差」にショック
――対策は取れるものなのでしょうか。
小林: ポストオフされた後、その人が企業側に「肩落とすなよ」と言われても、腐らずまた活躍しようと考え直すのは難しいでしょう。40代後半くらいからの事前準備が必要です。やはり自分のキャリアを見据えることですね。出世が途切れキャリアが変わることへの社員側の準備がないまま、企業側が強硬にポストオフをしてしまっているのが現状でしょう。
日本企業の特徴として、職務内容や転勤を社員自身で決めにくい点があります。これは国際的にも珍しい。どこに住んで何の仕事を担当するか、企業が強い人事権を持って決められるのです。経理のスペシャリストになりたくても労務にさせられたりする。だから社員も、何がやりたいかより「この時に労務担当なら出世コース」だとか、組織内でどうステップしていくかに目が向いてしまう。
――いわゆる昭和的な日本の職場では新卒時の一律初任給でスタートし、同期と出世競争を繰り広げるという在り方があまりにも当たり前でした。
小林: 本書のエピソードでも登場しますが、とある社員が同期より基本給が数百円低いからという理由でショックを受けたというのは正直、異常だと思います。同期と背比べし続けるのはもったいない。この同期カルチャーに慣れ親しんできた人には苦しいことでしょう。でも、どこかでサラリーマンは出世できなくなって天井にぶつかるもの。転換点は来るのです。その時に備えて、自分の仕事を振り返る機会が大事になってきます。
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