豊洲市場の吉野家が面白い 「時給1500円」に「超少ないメニュー数」:ここにしかない要素が満載(4/5 ページ)
2018年10月に吉野家の1号店は築地から豊洲市場に移転した。他店とは違うユニークな運営がされている。創業精神を受け継ぐお店に行ってみた。
仕込みを開始するのは午前3時30分
豊洲市場店は店舗のオペレーションの面でも、他の店舗と大きな違いがある。通常の吉野家では、お客から「牛丼の並盛と卵」と注文を受けた際、専用の機械に店員が注文を入力する。注文内容は、厨房にいる店員に即座に伝わる仕組みになっている。しかし、豊洲市場店では接客をする店員が「牛丼並一丁」と言ったら、厨房にいる店員は注文内容を記憶して、すかさず調理にとりかかる。これは、常連の注文に迅速に対応するための工夫なのだという。
豊洲市場店の店内を見渡してみると、あることに気付く。それは、アルバイトの時給が高いのだ。店内の看板には、午前5時〜8時が時給1500円、午前8時〜午後2時は時給1300円と書いてある。早朝5時にアルバイトが出勤しようとすると、利用できる公共交通機関がほとんどないため、自転車やバイクなどで通うしかない。そのため、時給を高めに設定しているという。筆者はかつて、東京駅付近で営業する某牛丼チェーン店が、ランチタイムに時給1400円でバイトを募集している看板を見かけたことがある。人手不足も背景にあるだろうが、自宅から通いにくい条件の店舗は午後10時〜午前5時以外の時間であっても時給が跳ね上がることがあるようだ。
築地店から持ってきたものは?
最後に、築地店から豊洲市場店に持ってきた備品などはあるのかどうか聞いてみた。全部で4つあるという。
1つ目は、店内の壁に掲げられている木彫りの作品。これは、創業当時の吉野家の店舗をイメージしてつくられたものだ。2つ目は築地で営業していた吉野家の店舗外観を描いた絵画。3つ目は店舗の外に掲げられた吉野家の歴史とこだわりを解説した看板。4つ目は、鍋に残された牛丼のタレだ。
このように、吉野家の豊洲市場店にはさまざまなこだわりが受け継がれている。観光目的で豊洲市場を訪れた際、寿司を食わずにあえて牛丼を食べながら同社の歴史に思いを馳(は)せるのも面白いかもしれない。
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