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リーダーが育つプロジェクトに欠かせない10の原則強力なマネジャーの下で働く経験は“逆効果”?(1/3 ページ)

変化の時代に機能するリーダーは、昭和や平成初期に評価されていたリーダーとは、求められる資質も振る舞いも大きく異なる。常に常識を疑い、走りながら考え、中長期的な視点でものごとを捉える――。そんな変化に柔軟に対応できるリーダーは、どんなプロジェクトを通じて育つのか。

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この記事は白川克氏のブログ「プロジェクトマジック」より転載、編集しています。


 新たな技術の進化に伴って、「これまでのビジネスモデルが通用しなくなり、油断するとあっというまに会社が没落していく」――。そんな“変化の時代”に企業が生き残っていくためには、“変化に柔軟に対応できるリーダー”の存在が不可欠だ。

 しかし、変化の時代に機能するリーダーは、昭和や平成初期に評価されていたリーダーとは、求められる資質も振る舞いも大きく異なる。常に常識を疑い、走りながら考え、中長期的な視点でものごとを捉える――。そんな“変化の時代を生き抜くための素養を持つリーダー”は、どんなプロジェクトを通じて育つのかを紹介したのが、拙著、「リーダーが育つ 変革プロジェクトの教科書」(日経BP社刊)だ。

 本コラムでは、本書の中で紹介している、“リーダーが育つプロジェクトのエッセンスとも言うべき10の原則”について、解説付きでまとめた。読者の皆さんは普段、どれを大切にしているだろうか? そしてあまり実現できてない要素はどれだろうか?

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“リーダーが育つプロジェクトに欠かせない10の原則

原則1:OWNERSHIP(オーナーシップ)

 世の中にプロジェクトマネジメントの本はたくさんあるが、どれも「全権を持ったマネジャーが一番上に1人いて、その下にいるメンバーが手足として、マネジャーの意志を粛々と実行する」――というモデルが、暗黙の前提になっている。

 しかし、強力なマネジャーの下で働く経験は、ひょっとしたらリーダーシップの修行には逆効果かもしれない。なぜならリーダーは、自分が担当する局地戦においては、自分のビジョンを持ち、自分で判断する必要がある。マネジャーの手下になるのとは真逆のマインドが必要なのだ。

 この「ここは自分の領域だ。この仕事を成し遂げることは、自分の責任として担保せねば」という感覚をOwnershipという。勘違いされやすいのだが、Ownershipは「100%、自分一人でやりきること」ではない。逆にスキルの高い人に手伝ってもらってでも、他の組織に動いてもらってでも、何でも良いのでやり遂げることに責任を持つことだ。

 育つプロジェクトでは、たとえ小さくても良いので、全てのメンバーに担当領域を持ってもらう。スキルが十分に高くなる前は、「取扱商品ごとの在庫管理方法を調べて一覧にしてください」といった小さめのタスクになる。最初は、それですら自力では完遂できないだろうが、それでも「ここは自分の領域」と言い切れる部分を持つことが重要なのだ。

原則2:CHALLENGE(チャレンジ)

 プロジェクトを立ち上げる際に悩まされるのが、十分な知識/経験を持った人が本業で忙しく、プロジェクトに十分な時間を割くことができない――という問題だ。

 しかし、「育つプロジェクト」では、たとえ十分な知識を持たない非エキスパートの社員でも歓迎される。プロジェクトで必要なワークスタイルは、参加しながら身につければ良いからだ。業務の知識が足りなければ、詳しい人をゲストとして招き、引き出せば良い。“経験者がいない”という問題を前にして立ちすくむよりは、まず、組織としてチャレンジしなければプロジェクトは前に進まない。

 変革プロジェクトをやる以上、どのみち、チャレンジは避けて通れないし、プロジェクトに参加する個人にとっても、これまでやったことのない仕事や役割、なじみのない業務領域に取り組まざるを得ないシーンが続出する。

 組織としても、個人としても、新しいことにチャレンジするのだから、失敗するのは当たり前。普段の仕事をする時とは、仕事に対するスタンスや価値観を変えて臨むべきだ。だから熟練者/有識者でなくても、“失敗前提で”プロジェクトに放り込むしかない。

原則3:OPINION(オピニオン)

 僕は普段、大企業の方と仕事をすることが多く、そこには真面目な方が多い。そういった方々は変革プロジェクトについて議論をしていても、「正しいこと」を言おうとする。正しいことというのは、(1)会社の方針に沿っているか(2)コンプライアンス的にOKか(3)事実の裏付けがあるか――といったことだ。

 しかし、たいていのプロジェクトには正解がないし、プロジェクトを前に進めるのは「正しさ」ではない。「私はこうあるべきだと思う」「オレはこうしたい」という意見である。

 自分の意見を皆に示し、それに賛同する人がいたら、その人がリーダーと呼ばれる。だから、反対されることや正しくないといわれることを恐れずに、まずは自分のオピニオンを表明しなければならない。

 日本人はこれがとにかく苦手で、普通に議論をしていても特定の声の大きい人しかオピニオンを示さない。育つプロジェクトでは、普段、オピニオンを示すのに慣れていない人にも、オピニオンを表明する場を意図的に作る。オピニオンがない人に対しては、自分が大事にしていることを見つめるのを手伝い、オピニオンを形作る手伝いすらする。

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