市場は縮小しているのに、なぜトラとコイの国語辞典は好調なのか:水曜インタビュー劇場(阪神・広島公演)(6/6 ページ)
三省堂の国語辞典が売れていることをご存じだろうか。昨年「タイガース仕様」を発売したところ売れて、今年「カープ仕様」を発売したらまた売れて。「辞書」といえば「カタイ」イメージがあるが、なぜ同社は球団愛に満ち溢れた辞書をつくったのか。
次はどうする?
瀧本: カープ仕様を販売してみて、興味深い数字が出てきました。どこで売れているのかを調べたところ、広島県でものすごく売れていることが分かってきました。実売率(実売数÷仕入数)を見ると、全国平均は49%なのに、広島県では67%(5月9日現在)。タイガース仕様を発売したとき、関西での売れ行きはよかったのですが、広島ほどではありません。
土肥: 広島には熱烈なカープファンがたくさんいる、ということですね。最後に、これはどうしても聞かなければいけません。次はどの球団の辞書を出すのでしょうか?
瀧本: 先ほども言いましたが、タイガース仕様を出したときに、メディアからの質問に対して、「まだ決まっていません」と答えていました。今回も、まだ決まっていないので、「まだ決まっていません」と言わざるを得ないんですよね。
土肥: 3冊目はロッテにして、4冊目は巨人にして、5冊目は……と考えると、編集部側が追い詰められた気分になりませんか? 三匹目のドジョウ、四匹目のドジョウとなって、十匹目のドジョウを狙いにいったら、先方から「ウチは10番目かよ。おたくら感じ悪いなあ」と嫌味を言われるかもしれません。
瀧本: そーなんですよ。「いまごろ声をかけてくるなよ」と言われかねません。冒頭で申し上げたように、なぜ球団仕様のモノを開発したのかというと「低迷していた辞書のすそ野を広げる」ため。第一弾、第二弾は一定の成果を出すことができたので、「じゃあ次は〇〇球団で」と安易に決めていてはいけません。
紙の辞書の魅力をどのようにすれば、伝えることができるのか。そのために、企画力をもっともっと磨いていかなければいけません。
(終わり)
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