アマゾン傘下のクラウドベンダーが、開発者向けコワーキングスペースを運営する理由:狙いはどこに?(3/3 ページ)
共創ビジネスやビジネスコミュニティーを生み出すため、コワーキングスペースを設ける企業が増えてきた。コワーキングスペースの運営は、企業にどんなメリットをもたらしているのか。
相談エリアは技術者にとっての「1000本ノック」
AWSジャパンの技術者たちはもともと、ユーザー企業への訪問などを通じてユーザーサポート業務に取り組んできた。しかし、1日に訪問できるのは多くて4、5社程度。一方、ロフトにはさまざまな業界の利用者が集まってくるため、より多くの幅広い問い合わせに対応することができる。Ask an Expertにいる技術者は、1日十数件の相談に乗ることもあるという。
畑さんはAsk an Expertでの相談対応を「技術者にとっての1000本ノックのようなもの」と説明する。 「自分の技術がどこまで通用するか、どこまでユーザーに貢献できるか、Ask an Expertを通じて技術者自身が考えるようになった」(畑さん)
目の前の課題を解決し、ユーザーから直接感謝されることが、技術者たちのやりがいにつながったのだ。そこで得た自社サービスへのフィードバックも、機能改善や新サービスの開発などに役立てているという。
畑さんは「顧客の声こそが、われわれのロードマップ。サービスだけでなくロフトも、利用者からフィードバックを集めて、ビジネスとしてのポテンシャルがあるか見極めた上で反映している」と話す。オープン当初は行っていなかったカフェや自販機のキャッシュレス決済対応などは、利用者の意見を元に取り入れたものの1つだ。
一方で、畑さんは「どんなに要望が多くても、できないものはやらない」と取捨選択の重要性にも触れた。利用者から最も多い要望はロフトの営業時間延長や土日営業だが、「自社の社員の働き方を考える必要もある。ロフトを継続的に運営するためにも、それはできない」(畑さん)とした。今のところ「営業時間は平日午前10時から午後6時まで」という方針を変える予定はないそうだ。
ロフトは今後、イベントスペースとしての活用も進めていく計画だ。ベンチャーキャピタルなどと組み、技術面以外でもスタートアップをサポートする企画なども視野に入れているという。畑さんは「米国と比べ、日本はエンジニア主導のスタートアップが少ない」と指摘。ロフトを通じて新たに起業するエンジニアを増やすことで、スタートアップコミュニティーの形成にもつなげる考えだ。
「一番の理想は、ロフトをきっかけに起業して仲間と出会い、僕らのサポートを受けながらサービスを大きくしていった人が、今度は他の起業者を支える側としてイベントに登壇してくれること。数年後にはもう出てくる気もするが、これが実現できればロフトは成功だといえると思う」(畑さん)
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