なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
日産の業績が悪化している。「ゴーン前会長のことがあったから仕方がないでしょ」と思われている人が多いかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違うところが気になるという。それは、同社のCM「ぶっちぎれ、技術の日産」というコピーだ。
技術の日産を、ぶっ壊せ
そんな精神論を掲げる東芝と、同じにおいが日産からも漂い始めている。
先日の決算会見で、西川社長は「『技術の日産』というDNAは健在だ」などと「技術自慢」を繰り返した。これがどういう結末を招くかは、これまで見てきた通りだ。そして、さらに危ういのは、「3年で元の日産に戻す」と高らかに宣言をしたことだ。
顧客の嗜好や社会のニーズがこれだけ劇的に変わっていく中で、自動車会社が生き残るには、これまでとまったく異なる新しい姿へと変わっていくしかないのは明白だ。にもかかわらず、3年かけて「原点回帰」するという。残念ながら東芝同様、「自分」を見失っているとしか思えない。
今、日産が掲げるべきキャッチコピーは、「ぶっちぎれ、技術の日産」などではなく、「技術の日産」を「ぶっ壊せ」ではないのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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