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完敗としか言いようがない日産の決算:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
ズタズタの決算内容だった日産。一つの要因は、北米で販売促進費用(インセンティブ)をつぎ込んで売り上げを伸ばそうとしたことにあるのではないか。対策として、22年にはモデルラインアップの半数を電動化車両にするというがバッテリー供給は大丈夫か。20車種の新型を出すというのも、短期間で作られる新車は大丈夫なのか?
5月14日。日産自動車は2018年通期決算を発表した。昨秋以降お家騒動で揺れ続けた日産は経営的にも大丈夫なのかとウワサされてきたが、決算内容はもうズタズタで、かつ対策が完全に後手に回っていることが露呈した。
決算数字の惨状
まずは数字の確認だ。昨17年度と今年18年度を比較してみる。
- グローバル販売台数は577万台から552万台(マイナス25万台 4.4%減)
- 売上高は11兆9512億円から11兆5742億円(マイナス3770億円 3.2%減)
- 営業利益は5748億円から3182億円(マイナス2566億円 44.6%減)
- 売上高営業利益率は4.8%から2.7%(マイナス2.1ポイント)
- 経常利益は7503億円から5465億円(マイナス2038億円 27.2%減)
- 当期純利益は7469億円から3191億円(マイナス4278億円 57.3%減)
- フリーキャッシュフローは4070億円から1911億円(マイナス2159億円 53%減)
- ネットキャッシュは1兆7691億円から1兆5982億円(マイナス1709億円 10%減)
単純に減収減益減配というのみならず、滅多打ちというかフルボッコというか、1項目たりともプラスになったところがない。華麗とさえいえるほどの惨敗ぶりである。
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