ゴーン氏が「悪者」で西川社長が「男らしい」というおかしな風潮 後編:ゴーンショック(1/4 ページ)
ゴーン氏逮捕については、センセーショナルな事件であったことや、私的流用や公私混同の話がゴシップネタとして面白おかしく報じられたことから、ゴーン氏一人が注目を集める格好となった。しかし企業としての責任にフォーカスすると、どう見えるだろうか?
金融商品取引法違反の容疑で逮捕された日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏。一方で会見に臨んだ西川広人社長が、自社の不祥事をまるで他人ごとのように話すことに違和感を覚えた人もいる。
前編に続き、今回の事件で問題とされている「50億円の消えた報酬」について、どのような違反だとされているのか、ひもといて見ていこう。
50億円の消えた報酬?
さまざまに報じられる私的流用の実態は今後明らかにされていくと思われるが、逮捕容疑は金融商品取引法違反で、有価証券報告書の虚偽記載となっている。ゴーン氏が自身の報酬を50億円も少なく偽って記載していると当初は報じられた。
この話が会見で出た時は「50億円もごまかすなんてできるのか?」と疑問を持った人も少なくなかった。その後ごまかしている報酬は、SARと呼ばれる株価に連動した業績給、退任後に受け取る退職金的な報酬、退任後に顧問のような立場に就任して報酬をもらう予定などなどいくつかの話が出ており、いずれが真実なのか、あるいはどれも真実なのかは不明だが、その額は120億円とも報じられている。
ゴーン氏の報酬はルノー、日産、三菱自動車と三社の合計で年間20億円程度だが、ほかの海外大手自動車会社の役員報酬と比べると決して多くはない。したがってゴーン氏がより多くの報酬を要求してもおかしくはないだろう。一方で数十億円の役員報酬は日本では一般的ではなく、ルノーは政府が株主であることから国営企業のように見られていたのか、フランスでも高額報酬には批判的だったという。
報酬を少なく見せたいとゴーン氏が考えたとしてもおかしくはなさそうだが、現状では簿外報酬とでも呼びたくなるような巨額の退職金は、有価証券報告書に記載すべきかどうか、何とも微妙で白黒がハッキリしない。なぜなら会計ルールは複数の手法があり、企業によって、そして状況によって選択肢があるからだ。
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