今夏の流行は「五輪のかぶる傘」より「日傘男子」!? トレンド生む真の条件とは:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(4/4 ページ)
今夏はやりそうなトレンド「日傘男子」。猛暑が理由の1つだが以前に普及しなかった経緯も。流行を生み出すポイントとは?
縮む市場は「時間×ひたむきな努力」で開拓
傘メーカーの老舗、小川(名古屋市、小川恭令社長)では、数年前から男性向け日傘に注目し、オリジナル商品やライセンスブランド商品を発売しています。今、そのメンズ日傘が「18年度で2倍の売れ行き」(同社)で伸びています。
スーツ姿の男性がさしても恥ずかしくない落ち着いた色目の日傘、持ち歩いても邪魔にならない小型軽量かつ晴雨兼用の日傘、グローバルブランドとのコラボ日傘などを作ったところ、店頭で飛ぶように売れているのです。
同時に同社では、熱中症予防は「子どもにとってはもっと深刻な社会的課題である」として、従来のママ向け日傘、パパ向け日傘に加えて、子ども日傘を19年にリリースして話題になっています。全国の雑貨専門店などでは同社の子ども日傘コーナーがポップアップ付きで設置されるなど、小売店の店頭での注目も集まっています。
傘のような中小規模で、しかも縮小傾向にあったマーケットでも、環境の変化にあわせて
1.ターゲットシフト
2.機能・デザインシフト
3.売場シフト
を進めていけば、市場は拡大できるという事例です。
加えて何より、市場が成長していくまでの時間をじっと耐え、企業努力を重ねていくという「時間×ひたむきな努力」によって新たな市場は出来上がるのです。
同社も男性向け日傘を作り出した頃は、「全く市場が存在しなかった」ところに投入したため、市場の反応は冷ややかでした。ブルーオーシャンどころか、それを「欲しがる人がいなかった」からです。しかし、地道なマーケティングにより徐々に市場が変化してきました。そして19年、男性の日傘はキャズムを実際に越え始めたのです。
シュリンク市場を成長市場に変えるためのヒントが、今夏の「日傘男子」から見て取れます。男性の皆さんも、今年は日傘男子になって自らの商品のマーケティングを考えてみてはいかがでしょうか。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。ファッションを専門分野とした流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
関連記事
- 希望した客はいつもタダ! 奈良のトンカツ「無料食堂」が繁盛する深い訳
奈良に「希望者はいつでも代金無料」というトンカツ店がある。純粋な社会貢献で取り組む同店が繁盛する秘密とは? - 「バイトテロ」が繰り返される真の理由 大戸屋一斉休業で問う
3月12日に大戸屋が一斉休業するなど社会問題化する「バイトテロ」。そのメカニズムと真の対応策について専門家に聞いた。 - 中国人客は日本で「取りあえずビール」をやってみたい…… なぜ?
春節を前に中国人向けSNSのつぶやきを調査。2018年間の「訪日時に食べた物」を分析した。唐揚げやビールなどちょっと意外な物がランクイン。 - 胸の大きい女性が胸を張って着られる服を 27歳女性起業家の挑戦
27歳女性が起業した胸の大きな女性向けの洋服ブランドが急成長している。ユーザーの要望をきめ細かく商品に反映、Twitter上で同じ悩みを持つ女性の共感を呼びヒットした。 - 「退職予定者をいじめる」会社には重いツケが回ってくる、意外な理由
退職を表明した途端、上司などがつらく当たる問題。実はひどい対応を取った会社側に深刻なデメリットが発生するケースも。誰も不幸にならない「退職の作法」とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.