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日清食品HDのIT部門トップに聞く 「変化に強いリーダー」はどうやったら育つのか武闘派CIOに聞く、令和ニッポンの働き方改革【後編】(2/4 ページ)

これまでの当たり前を疑える目を持ち、社内外からさまざまな情報を集めてくるフットワークの軽さがあり、変化に対応できる柔軟なマインドを持っている――。そんな“変化の時代に必要とされるリーダー”は、どうやったら育つのか。

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―― 「ITを活用したビジネス変革」は、業務現場にどんなメリットをもたらすものを想定していますか。

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 喜多羅氏 まず、着手すべきは、「業務部門が本来やるべき仕事、やらなくていい仕事がどれくらいあって、それをどうやって改善していくのか」を、業務部門とIT部門が一緒になって考えることです。これが私たちの考える、働き方改革や生産性向上への突破口となります。

 例えば営業現場では、ERPのデータをExcelに取り込んで販促案件ごとに予算進捗を管理したり、実績を転記して報告書を作成したり――といった作業に膨大な時間を費やしていたりします。でも、営業担当者が本来やるべき仕事は商談であり、そこにもっと時間を使ってもらわなくてはなりません。「なぜ、営業担当者が手作業でデータを再入力したり、加工したりしなければならないのか」――という点に着目し、無駄な作業を順次なくしていく必要があります。

 もう1つ例を挙げましょう。会社組織が一定以上の規模になると、経費の申請や勤怠の管理など、部門間で定型的な確認業務が発生するようになります。こうした問い合わせへの対応に、かなりの工数が費やされているのではないのでしょうか。

 現在では、AIチャットbot(機械学習とロボットを使った自動対話プログラム。あたかも人間が相手であるかのようなやりとりができる)のような技術を各企業が盛んに導入しています。例えば「この領収書は、どの科目で処理すべきか?」といった繰り返し発生する質問への対応など、適用できる領域は多いでしょう。最初のうちは正確な答えが返ってこないかもしれませんが、実務を通じて学習を重ねていくうちに、AIチャットbotは必ず賢くなり、精度も上がっていきます。こうした技術を使うことで、省力化を実現できるだけではなく、業務時間外でも即座に回答が得られるといったメリットも生まれるわけです。

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問い合わせに対する答えをAIチャットbotに任せられる時代になりつつある(提供:ゲッティイメージズ)

 日清食品HDでは、こうしたAIチャットbotをはじめ、さまざまなツールのPoC(Proof of Concept:新たな概念やアイデアを実証するための検証を行うこと)を積極的に行っています。

―― PoCを行う際に、配慮すべきポイントがあれば教えてください。

 喜多羅氏 PoCで大切なことは、実際にソリューションを利用する“業務現場の人たち”と目標を共有することです。そのツールを使うことによって「これまで煩わしく感じていた面倒な作業が減り、これだけ生産性を上げることができる」といった明確なゴールを共有しながら、一緒に改善を重ねていくのです。

 そうすれば、業務現場のモチベーションは前向きなものとなり、同時にそのサイクルを回していく中で、IT部門も経験値を高めていくことができます。ともすれば、IT部門の担当者は「ツール自体の完成度」を求めがちですが、「実際に使う人たちにとってのメリットは何か」という最も重要な視点がおざなりでは、結局、IT部門の独り相撲で終わってしまいます。

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