日清食品HDのIT部門トップに聞く 「変化に強いリーダー」はどうやったら育つのか:武闘派CIOに聞く、令和ニッポンの働き方改革【後編】(4/4 ページ)
これまでの当たり前を疑える目を持ち、社内外からさまざまな情報を集めてくるフットワークの軽さがあり、変化に対応できる柔軟なマインドを持っている――。そんな“変化の時代に必要とされるリーダー”は、どうやったら育つのか。
組織の成長に不可欠な「リーダーシップ」と「オーナーシップ」
―― 組織の力を底上げするためには、メンバーの育成も重要です。そこにはどのようにアプローチしていますか。
喜多羅氏 メンバー一人ひとりに持ってほしいのはオーナーシップ(当事者意識)です。逆説的にいえば、そもそもオーナーシップのない仕事など会社組織には存在しません。「担当者」と呼ばれるようになった時点で、プロジェクトにアサインされた人間は、その仕事のれっきとしたオーナーのはずです。
ですから、私も担当者に対して常に「あなたの仕事はこのシステムを稼働させることだけではないよね? 業務部門で活用してもらうために、どんな手を打っているの?」といった質問をどんどん投げかけています。個々の担当者が、たとえ小さな責任範囲であっても、それぞれの仕事を自分の言葉でしっかり説明できるようになることを求めているからです。
実際、「どうすれば現場がもっと仕事を進めやすくなるか」「慢性的な残業を減らせるか」「お客さまの訪問件数を増やすことができるか」といった能動的な施策の提案は、当事者として現場の課題を知っている担当者でなければできません。そうした経験とトレーニングを日々重ねることで、組織全体に本物のオーナーシップが根付いていくはずです。
本質的な改革に「特効薬」はない
―― 「本質的な改革を断行できるIT部門」になるためには、どのような心構えが必要なのでしょうか。
喜多羅氏 本質的な改革を推進するのに、特効薬はありません。先にお話しした通り、さまざまな業務部門とのつながりの中で、「会社の売上と利益を向上させるために、どのような形で貢献するか」――という基本を押さえながら、各システムのプロジェクトマネジメントとサービスマネジメントを行っていくことこそ、IT部門としてあるべき仕事の進め方です。
その意味では、経済産業省が警鐘を鳴らしている「2025年の崖」が来ようが来まいが関係なく、IT部門はビジネスの変化に積極的に対応していき、投資対効果に対する説明責任を果たしていくのみです。
もちろん、自ら変革を主張していくことも大切です。企業経営者の中にはITに関心を持てない人も少なくないですし、投資判断を外部に任せているケースも少なくありません。こうした中で、「“ITを使った本質的な改革の重要性”を察して、トップダウンで号令をかけてほしい」――と経営層に期待しても、それは無理な話です。
だからこそ、IT部門から経営側に積極的に働きかけていかないと、施策が後手に回ってしまいます。経営者や業務現場が抱えている課題に対して、ITの観点から何ができるのかを、相手が理解できる言葉で伝え続けることが重要だと考えています。
自分たちが担っていくべき役割や機能を主体的に定義し、能動的なコミュニケーションを通じて全社に新たな競争力の源泉となる価値を提供していく――。これからのIT部門は、そんな組織へと変わっていく必要があると思います。
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