HUBがビールを値上げしたのに、客数と売り上げを増やせたワケ:災い転じて福となす(4/4 ページ)
英国風PUBチェーンの「HUB」は2018年6月にビールを値上げした。しかし、客数は減るどころか逆に増えた。どのような戦略を打ち出したかというと……。
フード改革の中身は?
低価格のドリンクを増やすと、どうしても客単価は下がってしまう。客数を増やすことでマイナスを補うのが目標だが、料理を注文しやすくすれば、客単価が改善するのではないか――こう考えたHUBは、フード価格の見直しにも着手した。
改革の柱は、500円以下のメニューが占める割合を、5割から8割に引き上げることだ。ただ、これまで提供していたメニューをサイズダウンして値下げするだけでは芸がない。そこで、仕入れ価格や原材料を見直すことで、価格を下げることにした。これらは「(飲食チェーンにとって)定石通りの手法」(担当者)だった。
ドリンクとフードのメニュー改定は結果として成功した。「客単価減×客数増=売り上げ増加」という狙いが的中したからだ。
HUBにとっての追い風要因
「ビールの値上げ」「ビール離れ」は、HUBに“うれしい誤算”をもたらしている。ビールの出数が減る一方で、カクテルの出数が増え、全体の利益率がアップしているというのだ。ビールに比べ、カクテルは原価率が低い。
また、若者の酒離れが進めば進むほど、HUBにとっては追い風になる可能性があると担当者は見ている。一般的な居酒屋チェーンで行われる飲み会では、自分はウーロンハイを1杯飲んだだけなのに、お酒を多く飲んでいる友人と同じお金を支払わなければいけないケースもある。それでは納得できないということで、飲み会の誘いを断る若者は一定数いると考えられる。しかし、飲める人と飲めない人が共存しやすいHUBならば、飲み会の場として活用してもらいやすい。現時点でも、グループで店を利用する場合、自分の好きなタイミングで入店・退店しやすい使い勝手の良さがお客に支持されている。今後、「低価格で飲める」という認知が広がれば懐事情の寂しい若者が新規客になってくれるかもしれない。
低価格化戦略が成功したHUBだが、同じように安さを売りにするチェーンはどんどん増えている。独自のビジネスモデルで、既存店をさらに成長させることができるのか。
関連記事
- 「どさん子ラーメン」は今…… 急成長から衰退までの経緯と復活のシナリオに迫る
札幌みそラーメンの“伝道師”として急成長した「どさん子ラーメン」。かつては1000店以上を展開していたが、マネされるのも早かった。“衰退”したと思われている一方で、復活に向けた動きもある。 - 「ハイボール 1杯50円」で、どうやって儲けているのか 鶏ヤローのカラクリ
首都圏の繁華街を歩いていると、「角ハイボール 50円」と書かれた看板を目にするようになった。激安の雰囲気が漂うこの店は、どのような特徴があるのか。運営会社の社長さんに話を聞いたところ……。 - レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - 「大阪王将」に後れを取っていた「餃子の王将」の業績が復活したワケ
「餃子の王将」を運営する王将フードサービスが復活しつつある。女性向けの新業態店や安価で量を減らしたメニュー開発が奏功したが、本質的な理由はほかにもあるという。どのような戦略を打ち出しているのだろうか。 - 清算された「ハブ」が、過去最高を更新している秘密
「英国風パブ HUB」を運営しているハブの業績が好調である。2017年2月期の売上高は過去最高、18期連続で増収だ。かつて売上低迷で事業清算されたハブが、なぜ復活したのか。その理由について、同社の太田社長に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.