HUBがビールを値上げしたのに、客数と売り上げを増やせたワケ:災い転じて福となす(3/4 ページ)
英国風PUBチェーンの「HUB」は2018年6月にビールを値上げした。しかし、客数は減るどころか逆に増えた。どのような戦略を打ち出したかというと……。
ドリンク改革の中身は?
HUBが打ち出した戦略は、ワンコイン以下で注文できるメニューを強化し、客数を増やすというものだった。リーズナブルな印象をお客に与えることで、来店を促す狙いだ。
HUBは低価格メニューを増やすに当たって、ドリンクの売れ筋を改めて検討した。390円や490円といったワンコイン以下のドリンクの注文数が圧倒的に多く、700〜800円台のカクテルはそれほど注文されていないことに注目した。高価格帯のカクテルを提供していたのは、「2次会で来店したけど、1杯しか飲みたくない。せっかくだから、ちょっといいのを頼もうかな」というニーズに応えるためだった。
メニュー改定に当たっては、490円のカクテルの種類を増やした。650円の「チャイナブルー」や「テキーラサンライズ」を490円に値下げしたり、新しいカクテルを投入したりした。メニュー表でも“490円コーナー”の枠を大きくした。その変化は、価格改訂前と改定後のメニュー表を見ると一目瞭然だ。改定前は、さまざまな価格帯のカクテルの写真がまんべんなく配置されていたが、改定後には390円や490円のカクテルのコーナーの面積が増えて、お客の目が自然とそこに向かうようになっている。ちなみに、ドリンクのメニュー数自体は減っていない。
創業の理念とも一致
低価格メニューを増やすことは、PUBという業態との親和性も高い。ハブ社内では390円のドリンクを「週刊誌価格」と呼んでいる。これは、創業時に提供していたビールやウイスキーの価格を週刊誌と一緒にしていたことに由来する。週刊誌は一度買って読んだら、あとはポイ捨てできる気軽さがある。同様に、1日1杯注文するだけでいいから、お客には毎日来店してもらいたい。それが、本場イギリスで親しまれているPUBのスタイルであり、PUBの文化を日本に広めたいという創業の理念とも一致する。
実際、一般的な居酒屋チェーンと比べ、HUBのお客はリピート率が高いのが特徴だ。お客の低価格志向に対応するのは、「HUBではリーズナブルに時間を過ごせる」というビジネスモデルの延長線上にある。
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