HUBがビールを値上げしたのに、客数と売り上げを増やせたワケ:災い転じて福となす(2/4 ページ)
英国風PUBチェーンの「HUB」は2018年6月にビールを値上げした。しかし、客数は減るどころか逆に増えた。どのような戦略を打ち出したかというと……。
HUBの基本的なビジネスモデル
値上げに踏み切る前、HUBのビジネスモデルはどのようなものだったのかを解説しよう。
お店が最も混むのは午後9時以降。午後7時〜9時まで他店で食事をしてきたお客が2次会の場として活用するケースが多いからだ。おつまみを食べずにドリンクだけを注文するお客も多かった。そのため、売り上げの8割をドリンクが占めており、フードの割合は2割にとどまる。料理に注力しすぎると居酒屋チェーンと競合関係になってしまうため、意識的にドリンクを強化してきた経緯がある。
2次会の店として利用されやすいのには別の理由もある。HUBはドリンクやフードを注文するたびにお金を支払う「キャッシュオンデリバリー」方式を採用している。そのため、グループで来店した場合、1次会で飲み足りなかったお客は自分のお金で遠慮せずにガンガン飲める一方、お酒にあまり強くないお客はちびちび飲むことができる。また、グループでまとめて会計する必要がないため、それぞれのお客が自分の好きなタイミングで帰宅できる。担当者によると、HUBの平均客単価は1500円前後だが、その内訳は490円のドリンクを1杯だけ注文するお客や、5000円以上注文するお客など、幅が広いのが特徴だという。
HUBではドリンクを100種類近くそろえている。価格帯は390円〜1000円程度と幅広い。「英国風PUB」と聞くとビールを飲むお客が多い印象を受けるが、実はカクテルを注文するお客のほうが主流だ。特に、レギュラーサイズで390円(税込、以下同)のジントニックはHUBの人気メニューとなっている。
なお、キャッシュオンデリバリーには弱点がある。それは、注文をするたびに会計をするので、リピーターほど値上げを感じやすくなってしまうことだ。飲み会の最後にまとめて会計をする方式ならば、値上げは感じにくい。
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