スティーブ・ジョブズが頼った“切り札”――「デザイン思考」がもたらすこれだけの“革新”:Google 、Apple、サムスンでは常識(5/5 ページ)
スティーブ・ジョブズが初代マッキントッシュのマウスのデザインを依頼した企業が前身で、「世界でもっともイノベーティブな企業」にも選ばれた「デザイン」コンサルティングファームIDEO(アイディオ)――。そのIDEOが生み出した「デザイン思考」とは一体どんなもので、いかなる「革新」をもたらすのだろうか?
デザイン思考のポテンシャルだらけの日本人
グローバルにオフィスを展開していったIDEOは11年、日本に進出します。その東京オフィスの発起人であるSungene Ryang(サンジン リャン)に声をかけられ、立ち上げメンバーの一人として奔走したのが、ぼく、石川俊祐です。実際には、IDEOの東京オフィスが立ち上がった当時は、まだロンドンのデザイン・イノベーション・コンサルティング会社PDDに所属していましたが、13年からは本格的にIDEOの仕事をスタートさせました。
ぼくはキャリアを通して一貫してデザインに携わり、デザイン思考を使い、イノベーションを起こすお手伝いをしてきました。同時に、 「日本人に本当のデザインを知ってほしい」という強い思いを抱き続けてきた。本書はぼくにとってその集大成とも言えます。ただし、デザイン思考そのものについては、それこそIDEO創業者であるデビッド・ケリーや現CEOであるティム・ブラウンの著作もあります。本書を読み、もっと深くデザイン思考を学びたいという方はぜひそちらも参考にしてください。
では、なぜぼくが本書を書こうと思ったのか?
ぼくがもっとも訴えたいのは、 「日本人にとってのデザイン思考」です。先ほどお話しした通り、日本では「デザイン」という言葉ひとつとっても正しく認識されていません。デザイナーの存在感も、ビジネスにおいてはまだまだ小さい。しかしそんな日本人にとってのデザイン思考は、「現時点では圧倒的に不足しているけれど、無尽蔵のポテンシャルを持っているもの」と言えます。
なぜ無尽蔵かと言えば、日本社会は、デザイン思考発祥の地である米国よりも、ずっとデザイン思考と相性がいい文化を持っているから。……いや、相性がいいどころじゃなく、数百年単位で「デザイン思考そのもの」と言える文化が脈々と続いていて、みなさんはそれを幼いころから浴び続けているからです。いわば、ベースの思考回路が「デザイン思考向き」 。日本人が、なぜデザイン思考を発明しなかったのかと、悔しく思えるほどです。
本当のデザインを知り、本当のデザイン思考を身につければ、みなさんの考え方や発想の質、もっと言えば「生き方」も劇的に変化します。そしてみなさんが変われば企業文化も変容する。やがては、日本社会全体が変わっていくはずです。
そのはじめの一歩として必要なのは、自分たちの「デザイン思考家」としてのポテンシャルに気付き、自信を取り戻すこと。いまこうして日本語で書かれた本書を読んでいる全ての人にそのポテンシャルがあることは、ぼくが保証します。本書を読み終わったとき、 「デザイナー的視点」を持ちはじめていることに、自分でも気付けるはずです。
ここから、 「デザイン思考家」への一歩を踏み出しましょう。まずはよく耳にする割に深く理解できていない言葉、 「デザイン」について、みなさんと前提を共有していきたいと思います。
著者プロフィール
石川俊祐(いしかわ・しゅんすけ)
AnyProjects 共同創業者・パートナー。1977年茨城県生まれ。ロンドン芸術大学Central St. Martins卒業後、Panasonic Design Company、英PDD Innovations UKのCreative Leadを経て、IDEO Tokyoの立ち上げに従事。Design Directorとして数々のイノベーションプロジェクトに携わる。2017年に日本を代表するデザインイベント「AnyTokyo」のファウンダーである田中雅人とともにAnyProjectsを設立。2018年よりBCG Digital VenturesにてHead of Designとして大企業社内ベンチャー立ち上げに注力。2019年3月よりBCG Digital Venturesアドバイザー就任。同年3月よりAnyProjectsに新たな仲間を加え、5人のパートナーにて新たなスタート。プロダクト、サービス、空間、メディア、ビジネスから教育や働き方のデザインまで、分野を超えて、未来の価値創出プロジェクトに携わる。
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