ベストセラー『思考の整理学』著者・95歳“知の巨人”外山滋比古が語る「脱線のすすめ」:「知的試行錯誤」のすすめ【前編】(2/3 ページ)
95歳“知の巨人”外山滋比古が語る人生を面白く生きるための思考法――。
1年が早い人は“悪”が足りない
最近は人間がちょっと小さくなっているように感じます。やっぱり人間はいろいろ雑多なものを経験したほうがいい。ウソも必要だし、ある程度の悪さもしなきゃダメです。
悪いことは一種の楽しみ。面白いのです。いいことばかりしていたら人間がダメになります。
道徳的に見れば問題のあることを考えたとしても、思考という点においては、人は自由であり、責任を問われない。
「年をとると1年がとても早くなる」と聞くけれど、そうでもあり、そうでもなしです。
早く感じる人はおそらく、まだ“悪”が足らないのでしょうね。
もうちょっと悪いことをすると、けっこう長くなってきます。常識といわれていることを外れると、やっぱり人は緊張しますからね。一瞬一瞬が濃く、味わい深くなるのです。多少悪いこと、よくないこと、恥ずかしいことをやらないと、退屈でボケちゃいますよね。
混ざりものがあるから「18金」は強い
親鸞が「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」(悪人正機)と、悪人こそが救われるといいましたが、これは本当だと思います。
いいことばかりしている人は、自分がえらいと思い込んでしまって努力をしなくなるから、本当の意味でえらくなりません。
自分を顧みる力、自分には悪いところがあると感じられるのは、やっぱり“悪人”。悪人は悪いことをするから、つねに緊張しており、安住していないのです。
若いときは失敗やマイナス経験といった悪いこと、致命的にならない程度の悪いことを経験したほうがいいんじゃないかと思います。
いわゆるエリート、優等生は、悪いところが少ないから、人間的に浅くなります。人生の途中で力を失ってしまうのは、“悪”が足りないからです。
金でも24金の純金は弱くてダメです。18金ぐらいがいい。つまり、25%の混ざり物を入れることで耐久性が出て、はじめて金としていろいろ加工できるのです。
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