人事部は、AIによって消滅するか?:付き合い方(4/4 ページ)
組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する。
二つ目は、人事データという曖昧かつ一面的な情報からAIが導いた回答と、どう付き合うかという問題である。将棋の指し手や局面はすべてデータ化が可能であり、そのデータにはモレがなく、そのデータ以外に勝負の結果を左右したものは存在しない。人事はそういう訳にはいかない。能力やパーソナリティについて適性検査などが表現する内容は、当たり前だが人間の一面であり一部分に過ぎない。異動歴・キャリア、人事考課の内容・結果、研修歴・学歴・資格・健康状態・家族、その他さまざまな人事情報を含めてデータは豊富だが、どこまでいってもモレがあり、曖昧な要素だらけである。組織や人事制度も何度か改定が行われているだろうから、昔のデータをどう捉えるかも難しい。このようなデータ状況で示された「次の一手」は、いくらAIが推奨するものであっても、モノやカネではなく人間を扱う責任やプレッシャーがある人事マンには、無責任な占いのように信用できないだろうし、それでは人事がAIと共存できるようにはならないだろう。
手詰まり感が漂う人事部が、AIの力を上手に活用していく際の課題は、まず、人事部のさまざまな仕事の「目的」を明らかにすることであり、次に、人事データの一面性と曖昧さを自覚したうえで、AIが導いた思わぬ回答とどう向き合うのかを検討しておくことである。(川口 雅裕)
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