企業を崩壊させかねない「組織急拡大の壁」問題、Sansanはどうやって乗り越えたのか:成長痛をどう乗り越えるか(2/4 ページ)
社員の増加に伴って、企業の文化や理念が社員に伝わりにくくなり、いつしか社内がバラバラの方向を向いた統合性のない組織になってしまう――。そんな「組織拡大の壁」問題をSansanはどうやって乗り越えたのか。
最初は創業メンバーの思いを込めて、その後は、経営陣を含む全員参加型で考えてきた経営理念は、Sansanの文化や社員の行動に反映されている。
例えば、「意思と意図をもって判断する」というバリューは、社員一人ひとりの意思を重視する習慣につながっている。
「社内では、『お前はどうしたいんだ?』という問いかけがすごく多いです。例えば上司に何かの判断を仰ぐとき、『AとBとCの3つがあるのですが、どれがいいと思いますか?』というのはNGで、『お前はどれがいいと思うんだ?』と聞き返されます。『こういう判断でBがいいです』と、自分の意思と意図を示せば、上司から見て明らかに間違った判断でない限り『お前がそう思うなら、やってみたらいい』という話になるんです」(大間さん)
部門横断チームから役員へとリレーされた「カタチ議論2018」
「Sansanのカタチ」の見直しは随時されているが、過去の「カタチ議論」は前述の2012年のものも含め、これまでに3度行われている。2度めは社員数が200人になった2016年、3度めは約400人になった2018年だ。
2018年の場合は、ここ数年の間に入社し、過去の「カタチ議論」に参加していないメンバー約200人が、30ほどの部門横断チームに分かれてディスカッションするところからスタートした。
ベースにある「世界のビジネスシーンを変えていくような価値を生み出す」という目標は変えず、今の自分たちにふさわしいミッション、ビジョン、バリューを考える。そのために30チームそれぞれが1時間以上の議論を3回以上繰り返し、チームとしての案をまとめるところまでが「フェーズ1」だ。
これに続く「フェーズ2」には、役員以外の全社員が参加。フェーズ1に参加したメンバーが持ち寄った案をたたき台に部門単位でディスカッションし、部門ごとの案を全社会でプレゼンした。
その後、部長クラスが議論して全社会でプレゼンする「フェーズ4」、役員が議論して最終案をまとめ上げる「フェーズ5」を経て、2018年末に新たな「Sansanのカタチ」がβ版として発表された。
【2018年12月に変更された最新の「Sansanのカタチ(β)」(2019年5月現在)】
Mission
出会いからイノベーションを生み出す
Values
仕事に向き合い、仕事を楽しむ
強みを活かし、成果を出す
感謝と感激を大切にする
意思と意図をもって判断する
変化を恐れず、挑戦していく
Premise
セキュリティと利便性を両立させる
これを見ると、ミッションはさらにシンプルに、バリューは以前のままのものもあれば、削られたり追加されているものもある。プレミス(事業の前提)は、2014年に策定され、それ以来ほぼ変わっていない。ビジョンはミッションに包括できていると判断し、2012年11月に削除された。新たにビジョンを追加しても良いという前提で「カタチ議論2018」を行ったが、結果として追加はされなかった。
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