えっ、家が喫茶店になる? 自宅焙煎ができる「ホームロースター」が面白い:水曜インタビュー劇場(コーヒー公演)(2/5 ページ)
調理家電で、またひとつユニークな商品が登場した。コーヒーの焙煎機だ。大阪の家電メーカー「ライソン」がクラウドファンディングで公開したところ、3200台以上が売れた。家電量販店などであまり目にしない商品は、どのようにして開発されたのか。同社の社長に聞いたところ……。
コーヒー焙煎機をつくろうと思ったきっかけ
土肥: 市場にはまだ出回っていないけれど、人によっては「こんな商品が欲しいなあ」と感じるモノってありますよね。例えば、コーヒーの焙煎機。コーヒー好きの人にとっては、「家に一台、欲しいなあ」と思っても、なかなか手にすることができません。なぜならサイズが大きくて、価格が高いから。そんな不満を解消するような商品を、大阪の家電メーカー「ライソン」が開発しました。その名は「ホームロースター」。
大きさは電気ケトルくらいで、価格は2万円ほど。クラウドファンディングで公開したところ、目標金額の20倍ほどの資金が集まったので、この数字を見るだけでも、多くのコーヒーが注目していることがうかがえますよね。ただ、個人的に気になったのは、ホームロースターの構造なんです。ポップコーンメーカーの仕組みを応用しているそうですが、そもそもどういったきっかけでコーヒーの焙煎機をつくろうと思ったのでしょうか?
山: その話をする前に、会社の歴史を紹介させてください。当社は2018年5月に創業しました。1971年に吉名電工を立ち上げ、その後、社名をピーナッツ・クラブに変更。アミューズメント施設や家電量販店向けに商品の企画やデザインなどを手掛けてきたのですが、自社ブランドを立ち上げるために、家電事業を分割したのが「ライソン」になるんですよね。
以前からポップコーンをつくることができる機械を販売していまして、そのお客さんからこのような声がありました。「ウチは喫茶店を経営している。ポップコーンマシーンの技術を応用すれば、焙煎機をつくれるのではないか?」と。ちょっと気になったのでネットで調べると、ポップコーンマシーンを使ってコーヒー豆を焙煎している動画がアップされていたんですよね。
「じゃあ、当社でもできるのではないか」と考え、ちょっとつくろうとしました。でも、全くダメ。技術的に何が足りないのかよく分からないといった問題もあったのですが、そもそも当社のスタッフにコーヒーに詳しい人間がいませんでした。ちなみに、私はどうかというと、豆をひいてコーヒーを淹れたことがない。そんな状況だったので、喫茶店を経営されている方に「ちょっとウチでは難しいです」とお断りしました。
一度はお断りしたものの、やっぱりずっと気になっていたんですよね。スタッフからアイデアを募り、本を買って勉強したりして、なんとかできないかと糸口を探していました。いろいろ調べたところ、ポップコーンメーカーの基本的な構造を応用すれば、焙煎機ができることが分かってきました。風で豆を攪拌(かくはん)しながら熱風加熱し、マイコンで時間ごとに温度を調節する。このほかに、熱い温度でも耐えられるように素材を変えるなどして、なんとか試作品をつくることができました。
土肥: マシーンに生豆を入れて、ボタンを押す。そうすると、焙煎が始まって、冷却する。20分ほど待てば、完了するわけですよね。
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