Libraは日本で使えるのか? 国家が警戒する理由:ビジネスパーソンのための入門Libra(1/3 ページ)
世界各国の政治家や金融当局が懸念を表明するLibra。その理由には、プライバシーの問題とアンチ・マネー・ロンダリング対策があるが、最も重要なことは、Libra経済圏が大きくなると、国家の金融政策に影響を与えることだ。
ビジネスパーソン向け入門Libraの第4回は、Libraに関わる法律問題と、各国の懸念をお伝えする。ブロックチェーン大学校FLOCが主催した、ブロックチェーン技術の専門企業コンセンサス・ベイスの志茂博CEOの講演から。
国家はなぜLibraを懸念するのか?
Facebookが6月にLibraを正式発表してから、世界各国の政治家や金融当局が懸念を表明している。国内でも、日銀の黒田総裁は会見でLibraについて問われ、次のように話した。
「暗号通貨は、支払い決済手段として価値を本当に安定させることができるのか。技術上の安全性、安定性が確保されるのか。マネーロンダリング対策など関連する諸規制への対応が十分になされるか。どのようなものであれ、暗号資産が支払い決済手段として人々の信任を十分に確保し得るのか、決済金融システムにどのような影響を及ぼし得るのか。内外の関係当局とも連携しながら、動向を注意深く見ていきたい」
「ビットコインのときはそんなに言われなかったのに、Libraには、国とか金融規制当局が『あれはまずい止めろ』という話になっている。一番気にしているのは、金融の安定に影響がないかということ。金融政策に影響を与えると困る。それからアンチ・マネー・ロンダリング(AML)とプライバシーだ」(志茂氏)
AML対策として、LibraはCalibraにおいては本人確認(KYC)を必須にするといっているが、ウォレット単位での話であり、Libraブロックチェーン全体としてはKYCが必須になっているわけではない。また「国際的にKYCの枠組みが違う」(志茂氏)のも課題だ。ゆるいKYCを行っている国でウォレットを作り、国内でも利用できてしまう可能性がある。
このKYCへの対応を考えると、喧伝されているほどたくさんのユーザーが利用するわけではないともいえる。「Facebookのサービスを利用している27億人が使い始めるといわれるが、利用できない国がたくさん出てくる可能性がある。また、Facebookサービスで使うにはKYCが必要だが、果たしてみんながKYCをやるか」(志茂氏)
関連記事
- Libraをビジネスチャンスにしたい人が知っておきたい話
Libraが正式に稼働したとき、関連したビジネスとしてはどんなものがあるのか? コンセンサス・ベイスの志茂博CEOの講演から探る。 - Libraが投機対象にならない理由
Libraが発表された直後、ビットコインのような値上がりを期待する声がネットで見られた。しかし果たして、Libraを買うともうかるのだろうか? Libraコインだけでなく、もう一つのLIT(Libra Investment Token)についても解説する。 - ビットコインとLibraは何が違うのか?
グローバルに使うことを目指した暗号通貨としてFacebookが主導するLibra。技術面ではなく利用用途面から見ると、ビットコインと大きな2つの違いがある。 - Facebook、暗号通貨「Libra」を発表 Visa、Mastercardなども参加
Facebookがかねてよりウワサのあった暗号通貨を発表した。名称は「Libra」。すでにテストネットは稼働しており、2020年前半の運営開始を予定している。VisaやMastercardを始め、各業界から国際企業がLibraを運営する協会に参加している。 - Libraの2つの顔 超国家企業連合か、暗号通貨の「伝統」か
Libraが成功した際には、超国家的な通貨ネットワークが実現する可能性がある。それだけに、各国の警戒心は強い。グローバルな巨大企業が多数参加するという非中央集権的な側面と、ビットコインを起源とする非中央集権的なあり方を理想とする側面の2つを持つ。日本での法的位置づけも不透明だが、今後どんなシナリオがあるのかも探る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.