Mazda3の最後のピース SKYACTIV-X:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
「ガソリンとディーゼルの良いとこ取り」を目指したマツダの新型エンジンSKYACTIV-Xがデビュー。ドイツで行われた試乗会から、この技術の意味と、実際のフィールについて解説する。
今回マツダによるHCCIの改善版である、SPCCIのSKYACTIV-Xに乗って、ものすごく驚いたのはその作動領域の広さだ。SPCCIでは火花着火と圧縮着火をシームレスにつないでいるが、燃焼がどちらの領域にあるかをリアルタイムでモニターする表示が選べる。自己着火はノッキングのようなものだから、ノックセンサーと似たような圧力波センサーで検知できる。
チラチラと表示を見ながら運転すると、キックダウンするほど大きく踏み込んだ領域以外、ほとんど圧縮着火で走っている。切り替えのフィール差は全くないから、知らずに乗っていれば「何だか知らないけど良いエンジン」である。
そしておそらくこれは実用燃費を大幅に向上させるだろう。今回マツダのスタッフがごく普通に運転した実測値では19.2km/Lが出ているから、高速巡航のみに限って言えば20km/Lを超えてくるだろう。
さてATとの組み合わせはどうだったのかといえば、中負荷までの領域では、徹底してフレキシブルなエンジンのおかげもあって、粗が目立たない。ただし全負荷領域ではやはり変速時間が長く、そこは改善の余地がある。
SKYACTIV-Xをとことん味わい尽くしたいなら、負荷状態とギヤレシオを任意で選べるMTにしくはない。ただしATを選んでも大丈夫だろう。
Mazda3にとって、足りないピースは完全に埋め合わされた。シャシーの特性とエンジンの特性は相互に補完し合いながら、良さを引き立て合っている。これこそがMazda3の真打であり、状況が許すならばMTがベストMazda3であった。
値段の問題は実際のところ大きいだろうが、そこは各自の経済的状況に応じて考えていただくしかない。2019年の今、Mazda3はSKYACTIV-Xを得て、ちょっと突出した存在になっている。そこは保証できる。ただし念の為に書いておくが、技術に完成形はないので、きっとまだ進歩するだろう。基準はどんどん上がっていく、同じところにいたら取り残される。それが技術の世界だ。
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