“ウナギ密漁”の実態を追う――「まるでルパン三世の逃走劇」:「土用の丑の日」に憂う【中編】(5/5 ページ)
今年も「土用の丑の日」が7月27日にやってくる――。長年にわたってウナギを初めとした資源管理政策を研究してきた気鋭の研究者が、業界の闇に切り込む3回シリーズの中編。
今後の対策は?
さらに県は2017年に漁業調整規則・内水面漁業調整規則に基づく特別採捕取扱方針に新たな審査基準を追加し、暴力団員や暴力団に利益・便宜供与をした者、暴力団が経営に関与していると知りながら、それを利用した者はシラスウナギを採捕できないとしている 。
また、業界側での取り組みとして、仁淀川と四万十川の採捕許可名義人である県淡水漁業協同組合が今シーズンから、採捕人には顔写真付きの腕章着用を義務付けている。こうした対策のかいもあり、例えば禁止されている定置網によるシラスウナギ漁は「県や県警の取締が厳しくて割に合わなくなった」と高知県のあるシラスウナギ採捕者は語っている。
18年4月、高知県知事はニホンウナギ流通の透明化を図るため、全国的なウナギトレーサビリティーシステムの構築を提言、今年度水産庁の事業として行われるシラスウナギトレーサビリティー確立のための事業に、千葉、愛知、宮崎とともに参加した。シラスウナギの採捕や流通の実態把握を行うとともに、学識経験者、養鰻業者、シラスウナギ採捕者、自治体職員等で実証手法等地域検討会を組織し、トレーサビリティー手法の検討や実証試験を行う予定だという(高知県「にほんうなぎの流通の透明化について」) 。
高知県を例に、採捕・流通に関する問題や県による対策を紹介したが、特定の都道府県に限らず国全体・全国的な規模でのウナギ資源の保全と持続可能な利用のための対策としてはどのようなものがあるだろうか。次回の後編ではこれを取り上げてみたい。
著者プロフィール
真田康弘(さなだ やすひろ)
早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授。神戸大学国際協力研究科博士課程前期課程修了(修士・政治学)。同研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。大阪大学大学教育実践センター非常勤講師、東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アドミニストレータ、早稲田大学日米研究機構客員次席研究員・研究院客員講師等を経て2017年より現職。専門は政治学、国際政治史、国際関係論、環境政策論。地球環境政策や漁業資源管理など幅広く研究を行っている。著書に『A Repeated Story of the Tragedy of the Commons: A Short Survey on the Pacific Bluefin Tuna Fisheries and Farming in Japan』(早稲田大学、2015年)、その他論文を多数発表。
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